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                        美山の里3 

                                投稿者:関西のヒマジン  投稿日:2007年 9月16日(日)  


            かやぶきの家は平屋建てでしたが、2階に部屋がゆうに作れるほどの高さがありました。
           あとで聞いたら2階部分の屋根裏には、吹き替え用のかやを保存しているとのことでした。

           かやの吹き替えは、昔は30年に1回していたが、今では15年に1回の割合だそうです。
           昔は、毎日囲炉裏に木をくべて、その煙がかやを長持ちさせていたが、
           今では囲炉裏の生活をしていないので、かやの寿命が早まるのだそうです。
           そして、吹き替えにはなんと700万円もかかるそうです。

           部屋の間取りは、囲炉裏のある部屋のほかに3つの部屋と炊事用の土間から成り立っていました。
           宿は50代後半と思われる夫婦が切り盛りしていて、彼らは宿の隣の家に住んでいて、
           宿はお客さん専用になっていました。

           部屋の中の鴨居の上は、表彰状やら有名人の色紙で埋め尽くされていました。
           そして奥さんが早速表彰状の話をしてくれました。
           奥さんの話によれば旦那さんは釣りが得意で、近くを流れる由良川で鮎の友釣りをして
           釣ってきた鮎を自ら料理してお客さんに出すということでした。
           飾ってある表彰状は「スポニチ鮎釣り大会」で優勝したときのものでした。

          饒舌な奥さんに比べて、旦那さんは寡黙な人で、簡単な挨拶をして直ぐ台所に引っ込んでしまいました。
          あとで分かったことですが、私たちが善人の集まりであると分かったあとは、とても饒舌になり
          土地のことなどを色々教えてくれました。

          彼の鮎釣りは、13メートルの竿を駆使して、しかも川には入らないで陸から釣るそうです。
          普通鮎つりは、川に腰まで入り釣るようです。
          しかし彼の場合それをしないで鮎釣り名人になれるということは、
          よほど鮎の居る場所を知り尽くしているからでしょう。

          私は予約するときに、鮎料理をリクエストしていましたので、夕飯には彼がその日に釣ってきた
          鮎の塩焼きが食卓に上りました。
          何でも、由良川の鮎釣りは今日で終了するとのことでしたので、私達は丁度良いときに行ったわけです。
          由良川の鮎は全国的に有名で、味が良いので評判だと言っていました。
          また、「鮎は鮎釣りが終了した後では宿の食膳に上らないか」質問したら、そうではないらしいのです。
          つまり、釣れるときに釣っておき、瞬間冷凍して保存しておくそうです。
          ただし、釣りたての鮎とは全然味が違うと言っていました。

          私は多分天然の鮎を食するのは初めてでは無いか思います。
          旅館や料亭で天然と思いた食べた鮎はぼってりして、特に腹の部分が膨らんでいました。
          ところがこの鮎は、腹の部分にもぼってり感が無く、スマートな姿をしておりました。
          そして奥さんから鮎の塩焼きの骨の外し方を教わり、いざ食べてみると養殖とはやはり違っていました。
          違いが際立っていたのは、はらわたの部分でほのかに苔の香りがしていました。

          鮎のほかは、この地方の名物である地鶏のすき焼きが出ました。
          歯ごたえがしっかりしており、スーパーなどで売っている鶏肉とは全然違ったものに感じましたね。
          その他、鹿の肉も珍しかったし、鯉の洗いも臭みが全く無く美味しかったですねぇ。
          また、京都の加茂ナスで作った焼きナスは絶品でした。

          鴨居の上には、かやぶきの宿の四季の写真や表彰状の他、牡丹鍋の写真や有名人の色紙や写真が
          飾ってありました。
          この宿には有名人も訪れるらしく、名前が判読できただけでも食いしん坊万歳の渡辺文雄や
          女優の宮崎淑子や伊藤麻衣子などがこの宿を訪れたようです。

          また、冬場は牡丹鍋を提供するそうで、猟師から仕入れたイノシシを旦那が自ら捌いて食膳に出すそうです。
          初めて聞きましたが、イノシシの捌き方は鮟鱇のように吊るして捌くのだそうです。
          牡丹鍋は肉だけしか出さないので、内臓はどうするのか聞いてみたら、イノシシの内臓は
          寄生虫が多くいて捨ててしまうそうです。

          食事が終わって、土間を見ると不釣合いなピアノが無造作に置いてあったので、聞いてみると、
         「阪神大震災で宝塚の家が全壊した人がたまたまピアノの下に隠れて命拾いをしたそうで、その人が宿を訪れ、
          後日寄付をしてくれた」そうです。
          寄付を受けたピアノで定期的に演奏会を開いて、集まったお金を復興基金に寄付をしていたということでした。

          また、道路沿いのあちこちに設けられている「放水銃」とはいかなるものか聞いてみましたら、
         「この地区が重要伝統的建築物保存地区に指定されているので、国で防火のため設置していて、
          水は一方向に出るのではなく、スプリンクラーのように四方八方に出る」ということでした。

          色んな話を伺っているうちに、夜もふけたので就寝し、翌朝は近くを散策し、朝食で再び鮎(一夜干し)を
          御馳走になりかやぶきの宿をあとにしました。

          京都へ帰る途中、桂川上流を堰き止めて作られた水資源開発機構の日吉ダムを見学しましたが、
          これは機会があれば報告させていただきます。

          京都の田舎は風情のあるところが多いので、皆さんも一度お出かけになってください。