三島市の源兵衛川 投稿者:ひまじん 投稿日:2008年 1月20日(日) 「繁華街 清流再び」 静岡県のJR三島駅近く。繁華街を流れる源兵衛川にはハヤが泳ぎ回り、 ほとりでは舞い降りた純白のサギが静かに羽を休めていた。 夏には無数のホタルが乱舞するという。人里離れた清流さながらの透き通ったせせらぎだ。 この川は20年前は無数のゴミが浮かび、ヘドロで埋まっていた。 ここまで劇的に生まれ変わったきっかけは、一市民の素朴な思いだった。 三島市内の県庁職員、渡辺豊博さんは、地元の女性が源兵衛川にゴミ袋を投げ捨てる光景に遭遇した。 水面には無数のゴミが浮かび、川は無残な姿をさらしていた。 「子供のころは富士の湧水に恵まれた美しい川で、最高の遊び場だったのに」と回想する。 女性に抗議しても「私だけじゃない。そう言うあなたは川のために何かしているの?」と言い返された。 二の句が継げなかった。 だがこの時、「昔の源兵衛川を取り戻そう」との思いが胸ではじけ、それがそのまま自分自身の夢になった。 以降、週末には小学生の子供と川のゴミを拾い、ヘドロをスコップで掘り起こす。 「うちの子供にとって、父親との思い出は川掃除だけ」と笑う。 もちろん個人の清掃だけでは不十分。公務員としての経験から、役所に訴えても簡単に動くとは思えなかった。 地域の力を結集しよう―。清掃を継続しながら、地元の青年会議所や市民団体などに訴え続けた。 政治信条や個人の利害とは無縁な純粋な目的だけに、1年半ほどで足並みがそろった。 こうなると役所も腰を上げる。整備事業を開始し、地元企業も協力。数年後には源兵衛川に清流が帰ってきた。 光をキラキラはじく水面に目を細めながら渡辺さんは感慨深げだ。 「私の夢は、実は地域共通の夢だったということです」