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                        California as I saw  

                                        投稿者:Steve Toda  投稿日:2016年10月20日(木)
 

  
 カリフォルニア見たまま(13)

 この国の色々な制度の違いなどを見てみましょう。

 まず、学校・教育部分ですが、日本と異なり6ー2ー4ー4制になっています。 
小学校6年、中学は2年で高校は4年で大学も4年です。 そして、高校までが義務教育です。
小中学校には英才児クラスがあります。 日本では考えられないことでしょうが、ここでは
出来る子はどんどん伸ばしていく形を取っていて、とび級制度もあり15歳で大学に入った
などという子もいます。 英語で教育は Education といいますがその Edu は Educe からきていて、
引き出すという意味があります。 即ち教育はその子の才能を引き出す作業だと考えて
詰め込み的なことはしません。

 驚くのは外国からやってきた子供達を問題なく受け入れてくれ、かつ放課後に言葉を教える
補習クラスをしてくれることです。  日本で駐在を終えて帰国した家族の子供がどこの学校にも
入れなかったという話しを聞いて、大変な違いだと思いました。 ここは移民の国ですから、
外国から来た子供が沢山いて、彼らを受け入れてやらないと多くの子供達が教育を受けられない
という大問題になってしまいます。

 子供の担任の先生に会いに行って、クラスで何番位ですかと聞くとおこられました。 
”あなたの娘さんは素晴らしいです。 毎日、毎月、毎年どんどん進歩していて、言う事なしです。 
大事なことは子供自身が前より向上しているか否かなのです。 クラスで何番かなどということは
全く重要ではありません。” と言われました。  知識の詰め込みではなく、ものの考え方とか、
考えた上で自分の意見をはっきり述べることなどを教育の中心に据えているように思います。

 前に家を買うとき学校のいい地区のものを探すと書きましたが、学校がいい地区は家の値段が
高くなります。 日本なら越境させるところでしょうが、ここではそれは出来ません。 そういう形の
不正は断じて許さないのがここのスタイルです。

 ここへ来てすぐに英語の勉強になるだろうと高校の夜間クラスに行ってみました。 
まず、驚いたのは生徒の半数近くが大人でそれもリタイヤーしたと思われる高齢者。 
再び勉強したいという人達で最前列に座って熱心に講義を聞き、どんどん質問もします。  
残りは若者たちで単位を取れなかったのでいわば補習のクラスに出ているのです。 講義にも
あまり熱心でなくあれでは補習のクラスも落とすのではないかと心配な生徒が多いようでした。

 このクラスでもうひとつ印象に残ったことはテストの答えが二つあったこと。  クラスは
アメリカン・ヒストリーで質問は ”コロンブスがアメリカを発見した” と言うものでイエスかノーの
返事にその理由をつけ加えるのです。 そしてなんと正解は二つあるのです。 ひとつ目の正解は
イエスで理由は証明された歴史としてはコロンブスがアメリカを発見したから。 二つ目の正解は
ノーでその理由は証明されていないがバイキングが先にアメリカに来ていたらしいからコロンブスが
アメリカを発見したとは限らない、というもの。  確かに、クラスのなかで先生がバイキングの話しを
したのを憶えています。 だから、本当は質問は ”証明された歴史としてはコロンブスがアメリカを
発見した” 、とすべきを先生がそうしなかった為に二つの答えができることになったものです。 
これは物事は角度を変えれば違って見えるという柔軟な考え方と、一方でははっきりと確認したもの
しか歴史として記録しないという厳密なここでのものの考え方を示しています。

 大学に入るのにこちらでは4つの点で入学かどうかの判定をします。 第一は高校の成績、第二は 
SAT と呼ばれる共通テスト、第三は自分で書いた論文、そして第四は高校までに何か誇れる事をしたか、
の四つです。 日本では共通テストだけですから、こちらは随分手間暇かけて大学に入れます。
特にここで重要視しているのが、第四の何かをしたかという部分です。 これは倶楽部活動とかスポーツとか
音楽等をしてきて、その部長だったとか州大会で優勝したとか他の人に出来なかったことをしたと報告
出来れば有利になります。 いわば、その実行力を見るのです。 単なるガリ勉は入れてくれないのです。 
このあたりから、この国を引っ張っているトップレベルのとてつもなく出来る万能選手が育っていくもののようです。

 私の息子は UC ロスアンジェルスに落ちて、UC バークレーに入りました。 いずれも世界的に有名な大学ですが、
ランクではバークレーの方が上で入るのは難しい筈ですが、逆になりました。 で、そうなったのは、彼の高校時代に
行ったボーイ・スカウトのイーグルプロジェクトの評価が違ったためだと思います。 ボーイ・スカウト活動はここでは
盛んでかつ集団生活や屋外活動の基本を学ぶ重要なものと考えられており、その色んな活動の最後の
プロジェクトで高齢者用の集合ハウスとか教会等の公共的な建物の一部や塀等のやり替えの建設等を自分で計画し、
設計し、予算を立てて、実際に工事をし、完成後報告書を作るというかなりのプロジェクトをするものです。
彼はかなりちゃんとしたプロジェクトを高校時代に行ったのです。 たぶん、これをどう評価したかで彼の入学が
決まったのではないかと思います。 一方はそれを評価し、他方はしなかったのではないかと思います。

 大学は最低一年は寮に入り息子の場合は幸い大学の中の有名なハースというビジネス・スクールに入ることが出来て、
最先端のビジネスのやり方を学び仕事もすぐに見つかりました。(ハースは本来修士課程の中にあるのですが、
学士課程の中にもあります)

 私の子供は UC (University of California) ですから州立、即ち公立大学に行きましたがこの国の大学は私立の方が
有名でハーバード、エール、スタンフォード等トップ大学は私立です。こちらでは医学部は別の大学で普通の4年の
大学を出てから医学部に行きます。 娘は UC ロスアンジェルスを卒業してから、私立のアルバート・アインシュタイン
というメデイカル・スクール(医学校)へ行きました。 親としては私立の医学校というから学費が物凄いだろうと真っ青に
なりましたが、こちらでは学費は日本の様に天文学的ではないのと本人がローンを貰ってあとで払うことにしましたので、
我々でも何とかなりました。 ただ、医学校はニューヨークにあったので、学校には入学式と卒業式だけに行ったのみです。

 その私立大学の幾つかはキャンパスを見に行きました。娘が受けてみようかなと言ったので。ハーバード、エール、
ブラウンなどですが、建物が素晴らしかったのはエールで石造りの壮麗なもので寮にいたってはダルタニアンの三銃士に
出て来るような代物で城の一部のよう。 ハーバードは煉瓦造りの落ち着いたキャンパスでこの国で一番のカレッジらしい
雰囲気に包まれていました。

 建物では UC バークレーも校舎は立派で高い時計台もあります。 又、UC ロスアンジェルスも娘が行ったので
キャンパス全部を回って分かったのですが、東の部分に煉瓦造りのアイビーリーグの様な立派な建物があります。 
娘は寮長のようなことをしたので4年間寮にいました。 9月の新学期に所帯道具を持って車でロスアンジェルスに
つれて行って、1年後の6月に家に戻りまた9月にロスに送ることを繰り返しました。 寮長というよりここでは
健康管理者で寮生で病気や怪我をしたものが出たら面倒を見るのが仕事でした。 寮で驚いたのは、トイレ、シャワーは
男女分かれていないことでした。

 ここでの教育、学校システムは子供の才能を伸ばすことに重点をおいて、ものの考え方を自分で見つけることに
向かって進むような形を取っているように私には感じられました。


つづく