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                    地球温暖化−ドイツの政治と産業界


                                             投稿者:風鈴  投稿日:2009年11月17日(火)


 又ドイツのエネルギー革命の話しですが、E-Energy(smart energy management、賢いエネルギー発電と消費)は
 政治に関係なく進行するようです。ヨーロッパ連合は27ヶ国参加で貨幣も一つで、排気量取引も一緒なので、
 効率が高い電力発電・消費へ一体化するのが当然でしょう。27ヶ国ですので、電力買売は日本以上に融通性を
 欠いていると推測出来ます。しかし北海の風力発電 Alpha Ventus企画と サハラ砂漠の Desertec企画は
 政治に左右されるようです。

 ドイツの原子力発電は総電力の30%以下で、日本の原子力発電の割合より少し低いくらいですが、2002年度
 に、全ての原子力発電所を2020年以後に閉鎖するとの法令(Nuclear Exit Law)を決議して、原子炉の
 計算された32年の寿命に元ずき次々と閉鎖する予定になってました。同時に再生エネルギー源開発へ
 国(税金)から援助する条令(Renewable Energy Sources Act)も設立され、そこで電力会社大手が皆、
 原子力発電を置き換える為に、風力発電Alpha Ventus企画とサハラ砂漠の Desertec企画へ真剣に取り組み
 始めたのです。
 玄海で古い原子炉を取り替えて、新しいプルサーマルを始めている日本とは違います。

 2002年度に全ての原子力発電所を閉鎖すると法律にしたのはSPD党(Social Democratsn Party, 
 Sozialdemokratische Partei Deutschlands)の政府で、グリーン党(Alliance '90/The Greens、
 Bündnis 90/Die Grünen)と一緒で多数になり、法令を通せたのです。2005年の選挙で現在のCDU党
(Christian Democratic Union、Christlich Demokratische Union)のメルケル首相になりましたが、
 党連合政府で原子力廃止を決めたSPD党がパートナーだったのです。

 とこらが今年の選挙で情況が変りました。
 不況の精か、産業を押しているFDP党(Free Democratic Party, Freie Demokratische Partei)の候補者が
 記録破りで当選しました。
 そこでCDU党のメルケル首相は同系統のCSU党(Christian Social Union Christlich-Soziale Union)と, 
 それにFDP党と3党合同政府になり、原子力廃止法を再検討し閉鎖を延期するかもしれない、となりました。

 原子力廃止が延期になると、電力会社に600億ユーロの利益があるとかで、風力発電や太陽発電企画を
 急ぐと、 電力過剰になり、電気の価格も下がるので、再生エネルギー企画のペースが遅くなるのではないか、
 との懸念が出ています。
 そこで政治家達は電力会社の予期される利益の600億ユーロの内500億ユーロを再生エネルギー源開発に
 使えるとか、電力会社がそれに同意しないと閉鎖を延期しないとか、これから喧々囂々の議論とタフな
 交渉がありそうです。
 世論調査によるとドイツ国民の60%は原子力発電廃止に賛成とかで、政府も公約で再生エネルギー開発
 予算も組んであるし、再生エネルギーへの切り替えはいずれ必然なので、電力会社が開発企画を延期した
 様子はないと言ってます。
 http://www.spiegel.de/international/germany/0,1518,653302,00.html

 上記の記事の後に再び「原子力発電廃止の延期は風力発電開発を遅らせるかもしれない」とありました。
 http://www.spiegel.de/international/business/0,1518,654857,00.html
 しかし2500の風車タービンの製作予算も認可されていて、風車建設は北ドイツに3万人への新しい
 仕事が出来て、税金からの金に加え、多く会社からの資金がすでに港や事務所の拡張の為に投資されています。
 電力会社は北ドイツの沿岸の3分の2の地域を、すでに風車建設用に予約しているとかで「凄い!」と
 言うしかありません。
 日本の会社も各自であちらこちらで海外の会社に投資してますが、一貫性がなく、政府の将来への作戦も
 無さそうで、原子力発電以外に自国への設備投資が欠けているのが、何よりも無念残念の
「フカのはぎしり」です。

 Desertec企画も実現までには沢山の難関がありそうです。http://en.wikipedia.org/wiki/Desertec によると、
 発電所はテロの攻撃目的にもなる、北アフリカに膨大な電力供給で北アフリカの国々がそれに頼り過ぎになる、
 北アフリカ諸国は相互関係が上手く行ってない、特にモロッコとアルジェリアからの協力が要る、
 とか沢山です。
 でもDesertec企画図を見ると、最初2−3ヶ所で上手く行けば、どの国も電力は欲しいでしょうから、
 企画の強みがあります。

 下のグラフはウィキペディアからで、日本とドイツの電力は何を使って発電しているか示しています。
 ドイツの人口が日本の約3分の2で、一人当たりの電力も同じ位で、両国とも赤の火力発電が圧倒的に多く、
 黄色の原子力発電の割合も同じ位で、日本は青の水力発電が多く、再生エネルギーの割合は日本が
 高いのです。
 しかしドイツでは今後、緑の再生エネルギーが急増化して2020年には現在の原子力の割合と
 交代するようです。
 一番羨ましいのは、出来るだけ自国で生産出来るエネルギーを増やそうと自国へ投資の国策です。

 このようなアメリカやドイツの記事を読んで思ったのですが、良く "tax dollar、税の金" の言葉が
 出てきます。
 日本政府の全部の金は、国民が税金で払った「税の金」そのもので「政府の金ではない」のに、
 「政府からの援助金、交付金、助成金、補正金、給扶金」とまるで政府自身の金を「贈り物」
 しているみたいに響きます。
 欧米では政府の金は「私達が納めた金」の意識が強く、国を治める仕事の為に選ばれた政治家が
 国民を代表して大電力会社と「利益を回せ」とか交渉していますが、それがが当然でしょう。
 日本に同様な政治が、いつの日にあり得るか、無駄な思考でしょうか。