地球温暖化−コペンハーゲンの燻り(2) 投稿者:風鈴 投稿日:2010年 1月12日(火) 空白の協定草案 このような会議には、前もって用意された協定(同意書)がありますが、議長から5ページの協定草案、 CONFERENCE OF THE PARTIES、Fifteenth session 、Copenhagen, 7–‐18 December 2009 Draft decision -/CP.15、Copenhagen Accord が http://unfccc.int/resource/docs/2009/cop15/eng/l07.pdf にあります。 最初の3ページは12項目の法的な協定事項があり、このような文書はトトシカーナさんには読み易い 文体でしょうが、普通の人にとって、これはEnglishでなく Gibberish で、最初の部分だけ「拾い読み」 すると、このようになります。 1.地球の気温上昇を摂氏2度以下にする。(何年との基準か明記なく、産業時代前、1900年と 憶測です) 2.IPCC (Intergovernmental Panel on Climate Change、気候変動の政府間パネル)の報告に沿い、 我々は協力し、途上国は貧困を無くすのが優先であると理解して、出来るだけ早く対策処置と 取るべきである。 3.開発国は十分な財政、技術、改善方法を途上国へ援助する。 などですが、飾りと定義の繰り返しが多い文で長々と12項目まであります。 ウィキペディア http://en.wikipedia.org/wiki/2009_United_Nations_Climate_Change_Conference の 日本語版に、この12項の訳がありますので、もし興味おありでしたら御覧下さい。 (日本版のリンクは長過ぎです) 法律文書を読まない私達には、特に私みたいに単純な者には「何でこう意味がない文ばかりで阿呆らしい!」 となります。 日本語版に『コペンハーゲン合意』とあり、閉会翌日の19日午前に28カ国が合意を作成とかですが、 この協定の前提は参加国全員承認が必要なので、この合意は協定でなく、法的束縛もなく、ただ記録でしか ありません。 この草案で注目すべきは、国々を Annex I Parties (京都定義締約国、いわゆる開発国)と Non-Annex I Parties(不締約国、途上国)に分けてあり、京都では三つのグループに分けましたが、 後で2グループになり、その分けたこと自体が問題の始めと言えるでしょう。開発国にはより厳しい義務が 課され、全部の国が二つの対立グループに分かれてるので、一つの方針に合意出来る訳ありません。 それを承知だったので、オバマ大統領は問題国と直接話しをつけよう、となったのでしょうか。 とすれば、彼が取った方法も理屈が通ります。 12.我々はこの協定の実行評価を2015年まで終える。その評価で1.5度気温上昇の可能性も考慮する、 が最後の事項で、次のページ#4は、Annex I Parties (締約国)が2020までに何%ガス放出削減するか、 何年が基準かと各国の誓約を記入する纏めで、ページ#5は Non-Annex I Parties (不締約国)が同じように 記入するようになってますが、全部が空白で終わったので、この会議の成果は蜃気楼でしかありません。 この蜃気楼は何でしょうか。 1.アメリカは2020年までに2005年度を基準にして、CO2放出を17%減らす。 2.中国は2020年までに Carbon Intensity (排出係数)を2005年度(明確でない)より45%減らす。 3.インドは2020年までに Carbon Intensity (排出係数)を2005年度(明確でない)より25%減らす。 4.ヨーロッパは2020年までに1990年度を基準にして、CO2放出を20%減らす。 5.日本とオーストラリアは2020年までに1990年度を基準にして、CO2放出を25%減らす。 アメリカ、中国、インドの雲はオバマ大統領‐温首相‐シン首相の会談から出て来ましたが、問題ばかり見えます。 先ずアメリカは医療制度改革が決議されてなくて未だ議会でもめていて、いつ気候問題に取り組むか 分らない現状です。 アメリカのCO2放出は2005年度からの削減は35%以上削減になるべきで、ヨーロッパは17%に大不満 ですが、17%削減さえ議会で通るか疑問で、オバマ大統領も沢山の助言者から、それを承知で17%が精一杯 だったのでしょう。 ヨーロッパは「他の国はが政府代表が出席だがアメリカは二つの政府(大統領と議会)がある」とも言ってます。 医療問題を片ずけてから討議されるでしょうが、約11ヶ月後にメキシコでの COP16までに議会で通過した 明確な削減目標があるか、それさえも分りません。 それに中国とインドの Carbon Intensity (排出係数) に引っ掛けての削減は『放出ガス削減』ではないのです。 以前に電気消費で Energy Intensity というのを使い(11月20日でした)「エネルギ−の密度」とか説明 しましたが、これも同様にGDP(国民総生産高)からの比率で、中国のGDPは過去10年間に平均8%で 成長とかです。 もし同じ比率で成長したら、10年後のGDPは現在の2.16倍になり、簡単な目安計算は正確ではありませんが 排出係数45%削減は、2020年放出量が現在より19%増加で、インドの経済成長が同じ8%としたら、 排出係数25%削減は実際の放出量62%増加になり、両国の経済成長は必然で放出増加も同じく必然となります。 これでは他の国々が中国、インドの犠牲になるばかりです。 主要国の政治家が未だ支持はしていますが、今後これら3ヶ国への反国感情が高まっても不思議ではないでしょう。 それを感じてか、胡主席の新年の声明は世界へ友好的だったのかもしれません。 科学者やヨーロッパが押している『2050年までに現在から50%削減』は夢の話で、 2050年は私達の世界ではありませんが、これから10ー20年内に気候変化がもたらす現象を経験するかも しれません。 これも同じ Spiegel の写真からですが、25の主要国との懇談で、左からバロソEUコミッション議長、 メルケル首相、ラインフェルト・スウェーデン首相、ブラウン・イギリス首相(手前)、サルコジ首相、 オバマ大統領。 鳩山総理もオーストラリア首相と一緒に「ヨーロッパとアメリカばかりではケシカラン!」と 割り込むべきだったでしょう。