地球温暖化−コペンハーゲンの燻り(3) 投稿者:風鈴 投稿日:2010年 1月14日(木) 協定と信頼性 前回に続いて、あるかないか分らない蜃気楼の話しです。 アメリカ−中国−インド間の合意は二つの条件の下で成り立ったようです。 1.アメリカもガス放出を減少して、途上国へ支援金を出す 2.中国とインドはガス放出の記録を国際機関へ公開する(皆が "transparent、透明である" と表現してます) 先ずアメリカの支援金ですが、クリントン長官が12月17日にコペンハーゲンへ来た時の声明を、以前 http://www.msnbc.msn.com/id/34459904/ns/us_news-environment// で紹介しました。 この記事の一部は An announcement by Secretary of State Hillary Rodham Clinton that the United States would contribute to a climate change fund amounting to $100 billion a year by 2020 was quickly followed by an offer from China to open its books on carbon emissions to international review. 「アメリカは気候変化資金へ1000億ドル(約9兆円)を2020年までに献金するというクリントン長官の 声明後に中国はカーボン放出の書類を国際機関に公開すると申し出た」 これはアメリカが毎年100億ドル(9000億円)を毎年10年間献金すると解釈しました。この文ではそれが 当然でしょう。 毎年1000億ドルとも解釈出来ますが、このアメリカの献金につきドイツ Spiegel の記事、 http://www.spiegel.de/international/world/0,1518,668111,00.html の一部に以下のような記事がありました。 「途上国への援助資金は、2020に1000億ドルになるだろう。クリントン長官は『沢山の金だ』と 言ってたが、そこでアメリカが幾ら献金するか、となったらクリントンは何も言っていない。 最後に叩き出された主要国のミニ合意草案にも何もない。」 The accord also holds another detail on just how generous the United States is. When it comes to immediate assistance for impoverished countries, the United States intends to contribute a total of $3.6 billion between 2010 and 2012. But, if you compare that with what other regions contribute, this figure appears rather miserly. The European Union plans to contribute about $10.6 billion, or about three times as much. And even Japan is chipping in $11 billion. 「この合意書はアメリカがどの位気前が良いかも示している。即急に貧困国への援助となると、2010年から 2012年までにアメリカは36億ドルを予定で、他の国に比べると惨めだ。EUは約3倍の106億ドル、 日本さえ110億ドル献金予定になっている」 ヨーロッパ諸国は「オバマとアメリカをどのくらい信頼できるか」と様子を見ることになりそうです。 日本が1兆3000億円の支援金で、その上に4000億の貸与金用意、EUは27ヶ国ですので、一ヶ国としては 日本が一番多いみたいです。日本は債券財政なのに、どうしてこう気前が良いか、一体何をやってるのか、 さっぱり分りません。 この前12月18日に紹介した、ロムボーグ教授の観点が正しく、この形式では問題解決にならないので、 国際会議はお付き合いだけにして、出来るだけ多くの資金を国内での他の燃料研究・開発に使った方が賢いと 信じます。 アメリカの次に、中国とインドのガス放出書類の透明度についてです。 長年に渡り「統治権への侵害」だと言って反対で、チベット問題の非難へも「内政干渉」と言ってるのと同じです。 中国は支援金の受領国なので、援助金を出した国に「資金が正しく使われているか」を確認する権利があって 当然でしょう。 しかし、このような資金は直接に中国政府へ行くので、長年の慣習である共産国方式、例えば総額の5%は 先ず共産党幹部と企画責任幹部の財布に入り、10%を政府一般会計に回し、それらが政府の管理費として 計上される、というような操作は国際機関が監査しても証明出来ないでしょう。それ以上調査しようとすると 再び「統治権への侵害だ」と揉めてしまいます。ガス放出書類も、どれだけ信頼性があるか、中国の制度は政府の トップの体制から少しでもはみだすと、政府を非難した作家の劉氏のように刑務所送りですから、書類の真偽性を 証明するのは非常に困難となります。 片やインドは民主国とは言え、書類偽造は国際間に知られた事実で、長年の植民地で英国式を押し付けられて、 公式と事実の差が当然の習慣になったのか、ともかく信頼出来るものではありません。 Spiegel の記事で "Selfishness Abounds、利己主義が一杯”と http://www.spiegel.de/international/world/0,1518,668408,00.html に「相互不信がこの会議を崩壊した」と あり、その意見は正しいのですが、相互信頼は「信じてくれ!」と言って出来るものでなく、長期間に自然と 歴史で確立されるものです。 そのような国際協定で確立された事実がない中国とインドを信頼出来ないのも無理はありません。 日本でさえ信頼を失う事をやる可能性ありです。 12月23日の閣僚委員会で、鳩山総理が「前提条件をつけたなかで25%をはっきりと書き入れるべきだと 思っている。 他の国々がやらないと、我々もやらないと示すことが重要だ」と述べたとの報道でした。 『排出国が皆25%減少する前提で、日本も25%減少と明示すべきであった』とは、今更何を言ってるので しょうか。そのような条件の報道が全く無かったのは、日本代表が何も明確に言わなかったからで、国際会議に 慣れてないとはいえ、このようなミスは大き過ぎます。次回でこの条件を持ち出すと、ヨーロッパからの 同情支持はあるかもしれませんが、中国とインドから「日本は全く信頼出来ない国だ!」と非難されても 彼等が正しく、言い訳もないでしょう。 これは世界中の報道陣のホールで、皆がラップトップを使えるように統一とは便利ですね。 昔の鉛筆と手帳を持った新聞記者は消えてしまいました。これで使える言葉は英語、フランス語、スペイン語 くらいでしょうか、皆が「省エネが大切である」なんての矛盾沢山のメッセージを本国へ報告してるかも しれません。