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                     地球温暖化−排気量取引(3)


                                             投稿者:風鈴  投稿日:2010年 1月24日(日)
  	国民が罰金払う

 欧州連合域内排出量取引制度(The European Union Emission Trading System 略でEU ETS)は世界で一番多い
 取引を行っています。大きな会社は政府に毎年放出量を報告する義務があり、欧州委員会が毎年新しい許容限度を
 決めて、この点では世界をリードしていると言えます。ロンドンのヨーロッパ気候取引所(ECX:European Climate 
 Exchange)は、欧州内の排気量取引の80%を占めているとかですが、昨年に問題が起きました。

 欧州委員会が取引制度の規則や年ごとに国別の制限量を決めていますが、ポーランドとエストニアが許容限が
 低過ぎる、とヨーロッパ第一審裁判所に訴えていましたが、「欧州委員会の割り当てはフェアーではない」との
 判決が下されました。
 欧州委員会の権限がひっくり返されたので、市場で1トンの放出ガス一トンにつき13ポンド以上だったのが、
 判決後に一時60セントに落ちたと http://www.timesonline.co.uk/tol/news/world/europe/article6846674.ece 
 で報道でした。
 放出ガスの値段が暴落して、ガス放出値段も安くなったので無理して削減することもない、となります。

 コペンハーゲン会議後にカーボン株値が、再び過去6ヶ月最低になり、1トンにつき€12.40 (ユーロ)に落ちたと
 http://news.bbc.co.uk/2/hi/business/8425293.stm にありました。法的な協定がなかったので、
 多くの国が削減に厳しく取り組まないだろう、と投資家は解釈してカーボン株値が下がったのです。
 このように取引制度になると莫大な金額になり世界中の何百という石油会社や金融会社の金儲け手段にもなって、
 本来の目的「地球温暖化ガス放出を削減しなければならない」から外れてしまっています。

 下のグラフはEUの排気量取引(Emissions Trading Scheme 略でETS)の Cap and Trade の例を示し、
 Pの線がガス放出許容量(キャップ Cap)、左のグラフはドイツが三角123の部分がキャップ以下、この部分を
 他国に売れます。
 右はスェーデンがキャップに達していてドイツからキャップ以下の部分を買い、三角defの部分をP以上に放出して
 良いという仕組みで、キャップ・アンド・トレード と呼ばれ、実際は会社と各国の政府が入り複雑になりますが、
 売り買いの概念はこれで良いでしょう。
 ヨーロッパ諸国はEUで、社会や経済状況が同じなので取引もフェアーですが、世界中の取引になると疑問が
 出てきます。

 ヨーロッパの排出量取引は遠い国での他人事のようですが、放出許容度を超している日本はすでに沢山の罰金を
 払っていて、国際連合枠組条約, UNFCC認可登録のCDM事業が https://cdm.unfccc.int/Projects/registered.html 
 にあり、正にお役所仕事の分りにくい書類ですが、日本がどのくらい参加しているか、一部だけ上げてみましょう。

 ●丸紅が中国雲南省漾濞族自治県で13万6千MWh水力発電所開発。 年間9万7千トンCO2削除と見積
 ●丸紅が中国福建省屏南県で約2万7千MWhの水力発電所開発。7年間で2万4千トンCO2 削除に相当と見積
 ●関西電力が中国甘粛省甘南チベット族自治州 5万7千MWh水力発電所開発。年間4万2千トンCO2削減の見積
 ●住友がインドネシア・スマトラ・ランプン州工場の汚水からメタンガス処理で発電。 年間6万3千トンCO2同価削除
  と見積
 ●三菱とドイツREW共同でチリの爆発物工場の硝酸使用からの亜酸化窒素ガスを処理。年間82万トン同価削除と見積

 これを見て分るのは関西電力を除き日本商社が金儲けで大活躍している事で、丸紅、住友、三菱等が誰かを代表して
 カーボン買い手、もしくはスポンサーになっているか、この書類では分りませんが、東電、関東電力、とか割と
 身近い会社としても驚きではありません。「日本の何処の会社がどの位のガスを放出しているか」の情報を探し
 ましたが見つかりませんでした。
 何らかの形で皆が罰金を払っているので、もう企業秘密情報でありえなく、ヨーロッパのように公開すべきの情報で、
 これから25%削減とかですが、新政府の外交はともかく電力会社のお家掃除する必要もありそうです。
 
 下の2番目のグラフは何がCO2放出しているかを示していて緑の部分が自家消費で極少なく、個人が省エネで努力
 しても全体から見ると全く効果がなく、発電所(電力会社)、運輸(自家用より商業運送)などが圧倒的に有罪で, 
 産業と民生は過去30年間増えてませんが、削減の余地があります。これでも自家消費は皆が良く努力しているのが
 分ります。

 消費者に認識してもらう『カーボンフットプリント』などの誤魔化しより、間接的に国民が多額な罰金を払って
 いるのですから、全ての火力発電所、工場のガス放出量を公表する、が環境省と経済産業省の第一の仕事では
 ないでしょうか。
 経産省は長年に渡り大企業を擁護する役目でしたが、事実上罰金を払う国民へ何が大きな問題か公開すべきです。