2style.net


       
 

                    地球温暖化−排気量取引(4)
 

                                      投稿者:風鈴  投稿日:2010年 1月26日(火)
  	

     不可解な政策から出たキャップ・アンド・トレード

 鳩山総理が昨年ニューヨークの国連の気候変動サミットで「25%削減を目指す」と国際公約として表明しました。
 それは排出主要国のアメリカ、中国、インド等が同意する前提だと言ってましたが、コペンハーゲンで様子が随分
 変わり、オバマ大統領が引き出した5ヶ国合意を、その後のヨーロッパは不本意ながらにも受け入れようかと考慮
 の最中に、日本の「アメリカ、中国、インドが25%削減したら日本も25%に合意する」などの主張が今更通る
 訳ありません。

 そこで日本は1990年基準で25%削減に誓約したことになりますが、この目標はEUより高く、果たして
 鳩山総理が選挙前に「25%削減」を公約した時に、何をしなければならないか認識していたのか、サッパリ
 分りません。
 高い目的は良く響きますが、具体案がない、実行出来ないでは、政治家として、人間としても信用度が全く
 落ちるでしょう。
 選挙前に沢山の公約をして、無駄を省くので予算を増やさない、と言ってたのと同じです。

 再び、12月18日の『なんと馬鹿高い愚かさ』、ブヨン・ロムボーグ教授の記事から引用ですが、
 科学技術政策研究所のロジャー・ピールク教授の計算によると、日本が2020年までに温室効果ガス放出を
 1990年から8%削減するには『新しい原子力発電所を9ヶ所、百万の風力発電機を建設し、ソラーパネルを
 3百万の家屋に設置し、新しく建てる家の絶縁材を2倍にして、グリーン車の購入の割合を4%から50%に
 上げなければならない。』とありました。
 この計算が正しいかどうか私達には分りませんが、8%減少するのに軽く30兆円以上かかるみたいで、
 もし資金があっても規模が大き過ぎて10年以内に達成出来るような企画ではありません。
 
 12月30日の閣議で、新経済成長戦略の基本方針決定の一つに
 「太陽光など再生可能なエネルギーの全量買い取り制度の実施などにより、2020年までに新たに50兆円
 を超える環境関連産業の市場と140万人の雇用を創出する」とありましたが、具体的に何から始めるか、
 何の説明もなしで、言葉で素晴らしい夢を描くのは結構ですが、それに伴った計画と執行が無いと、政治家の
 誤魔化しだけです。

 総理が昨年ニューヨークで25%削減を発表後に、ドイツ銀行が日本は13%削減は出来るかもしれないと
 仮定し、欠けている12%へ対し日本が幾らの罰金を払わなければならないか計算したそうです。その計算は、
 €13(ユーロ、当時の1トンの取引相場)x130円(円に換算)x10億トン(12%過剰放出分)
 =1兆6900億円となり、そのだけのCERを途上国から買わなければなりません。
 
 この辺で総理がやってるのが、さっぱり分りません。20%削減は可能でなくても、EUの誓約なので
 理解出来ます。
 それなのに5%余計に誓約して、13%削減可能としたら、余計な9850億円以上を途上国へ提供することに
 なり、これは既にコペンハーゲンで約束した1兆3000億の支援金とは別で、果たして、これが「友愛精神」
 の政治なのでしょうか。
 総理私財産だと何も言いませんが、国民の税金からの金なので、とんでもない「方向違いの友愛」と言わさせて
 下さい。
 余計な1兆近くの資金を国内で、多面で必要な研究・開発に使ったら、どれほど有効な成果があることでしょうか。

 下の画像はその状態を示し、現在の実際の放出量がグリーンのカーブで、6%削減が京都で日本が同意した
 ウス緑の横線で、それ以上の部分が現在払っている罰金です。
 国連UNFCCCは「罰金」でなくて、CERを買って「放出クレジット」と言ってますが、買わなければならないので
 罰金です。
 今は「25%削減」が合法的な誓約許容量になるのが何年か分りませんが、ピンクの縦線が罰金で、凄い急増加に
 なります。
 電力会社は電気料の値上げは1−2%くらいになると言ってますが、全てが5%以上値上げになっても驚きでは
 ありません。

 それで地球温暖化が止まるのなら大賛成ですが、問題は日本が2−3兆の支援金出しても、地球全体に
 何一つの改善がある訳でもなく、あらゆる面で国民が何でも余計に払うだけで、温室効果減少にもなりません。
 それだけの資金を国内で新エネルギー研究・開発に使う方が進歩もあり、国民の支持もあるでしょう。

 どうやら「国内排出量取引制度」が提案される様子で、制限以上のガス放出の会社は「罰金」なり「カーボン税」
 なりを払うことになり、それは良いのですが、集められた金が何処に行くのでしょうか。国内でガス放出削減資金
 になるのなら、 未だ良いと言えます。その金が途上国への罰金又は援助になるのだったら、取引制度は
 要らない組織、法律、規制、事務作業、会議など政治家の自己存在を宣伝するだけで、無駄で莫大な経常費を
 増やす一方となります。

 如何にしてガス放出を削減するかの手段や方法、それらを執行する計画、改善にかかる費用などの推進力、
 つまり「馬」が最初に必要で、排出量取引制度などは「荷車」でしかなく、政治家はそれが分らないふりを
 しているだけです。

 エネルギー源を変えるのは、凄く時間がかかるもので、現在具体案があっても10年以内に実際に遂行は
 出来ません。
 エネルギー問題は、産業ばかりでなく皆へ大きく影響を及ばし、政治家だけに任せられない重要さがあり、
 官僚でない、経済連でない、議会へ将来の方向を助言できる独立機関が望ましいものです。