地球温暖化−排気量取引(5) 投稿者:風鈴 投稿日:2010年 1月28日(木) オバマ大統領が始めてのState of the Union addressをやりました。 Declaring that “I do not accept second place for the United States of America,” President Barack Obama compared the economic crisis to the greatest challenges of the nation’s past, saying “history’s call” demanded a years-long freeze on huge chunks of popular government spending programs. In his first State of the Union address, Obama bluntly compared the recession to great challenges of the past like the Civil War and the bloody struggle for civil rights in the 1960s. While there has been progress, it has stalled, he said, telling lawmakers in the House chamber and millions of Americans at home that “the devastation remains.” “I take my share of the blame for not explaining it more clearly to the American people,” Obama said. “... This problem is not going away.” と、これから3年は政府の財布を引き締めていくようです。 http://www.msnbc.msn.com/id/35096238/ns/politics-white_house/ 取引(キャップ・アンド・トレード)の影響 少し古い記事ですが、昨年10月末にアメリカの Karl Rove の”Scrap Cap-and-Trade、キャップアンドトレード を捨ててしまえ”という記事が http://www.newsweek.com/id/220523 にありました。 Karl Rove は2007年まで前ブッシュ大統領の側近で助言者の一人で、共和党の政治屋でしたが、最近は ニューズウィーク、ウォールストリート・ジャーナルなどに記事を書いています。共和党だから右翼的な意見とも 言えますが、一般消費者として賛成出来る面も多いので、オバマ大統領が議会で17%削減を通す困難さも 見えます。 25%削減を誓約した日本が多額を払う時が来たら、多分同じような意見が出て来るでしょう。彼の意見を 要約してみると、 キャップアンドトレードは、 値札が高すぎる。天然ガス、石炭、石油の値を上げて、電気をつけたり、車を使ったり、輸送された品物を 買ったりする度に 余計に払う。財務省の見積もりではキャップアンドトレードで年間10−20兆ドルの 歳入になる。 議会の予算委員会では、15%のCO2削減するには、年に1家庭につき1600ドルかかると報告している。 収入に逆比例して、貧しい層に高い税となる。15%削減するには、高収入層には1.7%、中級には 2.7−2.9%、低給層の3.3%(約680ドル)になると予算委員会は見積もっている。 仕事を海外へ出てしまう。アップル・コンピューターは海外で生産してるので、アメリカの工場では ガス放出が3%だけで影響なしだが、アメリカで生産している会社より有利になる。 (注:日本経済連が同じ事を言ってます) エネルギー消費の効率を上げた方がガス放出の削減にもなる。途上国には、マラリアやエイズの治療、経済、 水道、 教育などの援助の方が大切で、健康な経済社会は環境も大切にする。 (私見:理想的過ぎるようです) 一度助成が始まると、停めるのが不可能に近い。現在のエネルギー源を清掃するのに集中し、省エネ、 二酸化炭素貯留、エネルギー効率向上、水素燃料など新しいエネルギーの基礎研究へ政府が投資して、 市場で商業化すべきだ。 キャップアンドトレードは年間10−20兆ドルかかり限られた結果だ。アメリカの15%削減は世界全体の 4%で、意義がない。投資銀行は儲ける為にキャップアンドトレードが要るが、その儲けは一般アメリカ人 個人の費用から来る。 大いにレッドネック的意見みたいですが、このような考えがアメリカでは強いので、オバマ大統領提議の 17%削減が議会で通過するか分りません。17%削減が議会で決議されたとしても、国際的キャップアンド トレードとなれば、世界で一貫したガス放出削減を証明する書類と厳しい監査があったら参加する、との条件つき になるかもしれません。 アメリカ議会では民主党だから皆が賛成するとは限らず、工業や火力発電所が多い州の民主党議員は州民の利益を 守るために「中国やインドの犠牲になりたくない」と粘るでしょう。 レッドネックと言いましたが「排気量取引もCDMも意義がないので止めよう!」という私もその一人になります。 ついでにレッドネックの意味ですが「教育も無い無知な白人の下層階級」ですが、日本人のブラウンネックでも 良いでしょう。 それは取引が即座のガス放出減少に使われてなく、「将来に減少するだろう」に使われているからです。 例えば中国で何百という水力発電所建設は、国連認可のCDM企画からで、国連のUNFCCCは、その必要性とか、 それによって影響される産業とかを十分に検討することなく認可しています。水力発電所建設で大量に使う鉄筋と セメントの中国生産工場は注文が増加で以前以上の大量生産、特にセメント生産からのガス放出はCDMが無いより 急増加です。 ドイツのREWは罰金払ったので以前と同様にガス放出継続で、取引はガス放出を削減でなく、増加さえしています。 以前に紹介した「プランB」の David Victorの意見、 「CDMは厳しい規制と監督、それに真剣に遂行できる管理組織が無いと意味がない」の典型的な例です。 許容以上に放出されたガスへの罰金制度は良いとして、その金を取引に使うのではなくて、2年以内に過剰ガスを 削減する為に投資しなければならない、という義務にすべきでしょう。3年経っても何の改善も無い場合は閉鎖に なる、とか厳しいかもしれませんが「自社(国)の削減は自社(国)が責任もって解決する」が取引以前の国際法 になるべきで、彼はこのような事項を「全部の国代表に受け入れ易くした国際協定で、実際には何の効果も無い」 と言ってるのです。 今までのように、国連で何回COPで削減量を交渉しても排出取引をしても、お役所仕事で事実上の削減には なりません。 それに取引にも別の方法があります。南アメリカとアフリカの森林が採伐で急速に減っていて、アフリカは1年に 1%の割合で縮小しているとか、少し古い記事ですが http://www.msnbc.msn.com/id/22970058/ にありました。 アフリカでは人々が農作地開発する為に森林採伐なので、例えば東電が1000万トンのガス過剰放出とすると、 罰金でアフリカへ食料、土地開発計画援助、加えて1000万トンのガスを吸収する木々の植林の援助をする方が 中国の水力発電所建設より、吸収を増やすので有効なはずです。中国のガス発生源の近辺で大規模な森林開発が 義務になっても構いません、中国も森林の成長と管理に義務がある協同作業になります。 下のグラフは京都定義書に署名した32ヶ国が、2012年までに誓約した削減と、2005年までに達した実状を 示していますが、文字が小さいので日本の部分へ矢印をつけました。左から悪い順に、スペイン、カナダ、 ポルトガル、ギリシャ、アイルランド、ニュージーランド、リッケンステイン、オーストリア、イタリア、日本、 スイス、オーストラリア、です。 右半分は目的達成の国でヨーロッパの国ばかり、東ヨーロッパの国々は参加して貰うために標準を甘くしたので 既に目標達成です。 これらの国々も疑問ありですが、中国とインドみたいにCO2放出大国ではありません。 これを見ると日本の問題は大きくなさそうですが、今度は「−25%」になることを想像して下さい。 「政府は一体何をやってるのか!」と言うのは多分私だけではないでしょう。 グラフの下は、溶けかかった信用度という氷の上に、山積みされた国連の書類と科学者が座っています。 科学者に責任があるとは言えませんが、国連で問題解決出来ない、の意見は多いようです。