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                    役目は終焉したか?

                                       中島 喜教
           
        このコラムに寄せるのもこれが愈々最後である。そして、鉛亜鉛需要開発センターでの
              仕事も余すところあと僅かとなった。過ぎてしまったらあっという間である。
 
        わがセンター勤務3年半を振り返り、その役目について改めて考えてみた。
       日本鋼業協会鉛亜鉛需要開発センターの前身は、1964年(昭和39年)に設立された
              鉛亜鉛需要研究会(通称「鉛研」)である。日本における鉛・亜鉛およびその関連製品の
              需要振興を図ることを目的とした。
       それは現在のセンターに引き継がれている。設立当時の日本は、高度成長期に当たり、
              ステンレス、アルミ、プラスチックの使用が拡大しつつあった時代とはいえ、
              鉛・亜鉛の生産及び重要も共に拡大を続けた時期であった。
  
        設立以来40年有余の年月が過ぎ、時代は大きく変わった。たとえばその間、世界の
              亜鉛消費量は年間324万トンが今では1000万トンを超え、その約25%を中国が占める。
       片やわが国は、25万トンからピークの82万トンを経て、ここ数年は55〜60万トンと
              横ばいの状態である。
       
               さて、この現状と日本の将来を見据えたとき、今後、日本における鉛・亜鉛の需要は
              どうなるであろうか。
       量的には大幅な増加は見込めない。おそらく現状維持もしくは減少に向かうであろう。
       最近、「センターは、すでにその役目を終えたのではないか」という声を耳にする。
              需要の量的拡販という視点から見れば、恐らくそうであろう。
       しかし、わがセンターには、需要家さんはじめ一般の方から鉛亜鉛に関するいろいろな
              照会が寄せられる。
       これまで先輩たちが蓄積した貴重な資料や国内外の関係先から入手した情報をもとに
              迅速かつより正確に回答している。

        この業務を個々の企業で実施するとなれば、今と同じサービスを提供できるかわからない。
       最近のRoHS指令問題がその典型的な例である。
              日本の電機メーカーは亜鉛ダイカスターに鉛フリーの部品を求める。当然である。
              ところが、問題はフリーの解釈である。 事実「鉛ゼロの亜鉛が欲しい」といわれて世界中
       探してもそれを提供できる亜鉛製錬会社は皆無である。海外の関係団体にも照会し、
       「亜鉛合金中の鉛品位がJISの規格値以下であれば、「鉛フリー品」と回答することにした。
       昨年はそのRoHS指令が亜鉛めっき会社でも問題となり、一部関係者はそれが建築材まで
       波及するのではないかと危惧を抱かれていた。情報がひとり歩きした結果である。
       その時も、欧州の関係先から入手した最新かつ正確な情報を伝えたことで混乱は収まった。
 
        ビジネスがグローバル化していく中、国内を主な市場とするわが国の鉛・亜鉛事業は
       今後も欧州の環境規制やISO品質規格など世界の潮流から逃れられないであろう。
       それに各企業が個別に対応するのは至難の業である。
       
        わがセンターにはこれまで国内外に築いてきたネットワークがあり、蓄積した
       データベースもある。それらをうまく利用すれば、わがセンターの使い道は
       まだ残っていると考える。
 
        読者のみなさん、鉛・亜鉛に関することならまず、わがセンターにご相談下さい。
       ホームページも開設しています。(http://www.jizda.gr.jp/)。
       
        1年間4回にわたり、鉛・亜鉛に関する情報提供の場を与えていただいたことに感謝したい。

                              (平成18年3月13日 産業新聞 産業春秋)