地球温暖化−将来への対策(4) 投稿者:風鈴 投稿日:2010年 2月 7日(日) Back to the Drawing Board, 図面に戻る 人間社会が化石燃料を使い過ぎてCO2を放出し、自然のバランスを壊しつつある現在、CO2を出さない燃料を 使うか、CO2捕らえて大気に出さないCCSにするか、が早い解決策でしょうが、CCSの安全性には疑問が あります。 原子力の増加もありますが、原子力は石油の取替えにはならず、高価で危険で、放射線廃棄物はどうしようも ありません。 そこで化石燃料を取り替える他のエネルギー源が必要で、国連など全く関係なく自国に合った低カーボン エネルギー源を開発し実用化するのが第一、第二の優先政策になるべきでしょう。 ここで原点に戻り、ある面では成功している国とか、将来性がある技術や物質とかを調べてみます。 地球全体の温暖化は解決出来なくても、先ず自国の問題を克服していないと他国に何とも言えません。 A) スウェーデン 1 先ず「賢明な政治」で一番感心出来るのはスウェーデンだと思えます。 スウェーデンの環境省のサイト http://www.sweden.gov.se/sb/d/11459/a/137113 昨年12月の報告に、 「2008年のガス放出は1990年から記録破りの12%削減になった。過去5年連続削減で、これからも住宅、 商工業用の建物、それに廃棄物処理で改善を続ける」とありました。 多くの政府報告は宣伝が多くて鵜呑みには出来ませんが、これは過去の記録に沿っているので信用出来そうです。 下の地図はヨーロッパの再生可能エネルギーの使用率を示し、緑がスウェーデン、ノルウェー、アイスランド、 オーストリアが40%以上再生可能エネルギーを使ってます。日本の再生可能(一次)エネルギー使用率は 5%足らずで、2020年までに10%までに上げようと政府が言ってますが、官民一体の共同計画も聞いた こともないので達成も疑わしく、それに10%は低すぎて、化石燃料依存が高すぎ、2020年までCO2放出 25%削減は『不可能だ』と言います。 スウェーデンが他国より顕著な面は「2020までに石油依存を無くす目標」で、理想的過ぎると言う人も ありますが、たとえ2020年に20%の化石燃料使用としても、日本の80%依存に比べると驚異的と 言えるでしょう。 スウェーデンの人口は9百万で日本の14分の1、面積は日本より16%広いのですが、立憲君主制で山地が多い、 個人の収入も同じくらいなどと似た面もあり、同じ民主国でも大きく違うのは、日本よりもっと「社会主義」で 200年近く戦争に参加してなく、8−11世紀には地域全帯を侵略して恐れられたヴァイキングの子孫とは 不思議です。 しかしCO2削減は人口とか面積とか人種にも関係なく、2003年にEUでガソリンからバイオ燃料へ変えようとの 決議から、『2020年までに石油から独立する委員会』を造り、その委員会が2006年6月に提案した 事項が、http://en.wikipedia.org/wiki/Oil_phase-out_in_Sweden にありました。具体的な目標は、 *陸上運輸の石油使用を40−50%減らす *産業の石油使用を25−40%減らす *1973年のオイルショック以来既に70%減った石油暖房を将来は皆無にする *全体のエネルギー効率を20%上げる 陸上運輸の石油を減らす為に取った手段が http://en.wikipedia.org/wiki/Ethanol_fuel_in_Sweden で 見れます。 2007年にサーブ自動車会社(Saab、スウェーデンでVolvoの次の会社)が E85(エタノール85%、 ガソリン15%の混合)で走る車を紹介しました。このE85が「フレックス燃料 flexible fuel」と呼ばれ、 車がFFV(flexible-fuel vehicle)で、フレックス車の歴史はフォードのモデルTからで何も新しくなく、 ブラジルで1979年にフィアットがE100(エタノール100%)の車を生産したのですが、スウェーデン での大量生産は数年前からみたいです。 ブラジルではE100もあり、FFVでは世界一ですが、ブラジルについては後で取り組むことにします。 アメリカは精々E10(エタノール10%)、日本ではバイオガソリンと呼ばれて、普通のエンジンに使うのでE3 (エタノール3%)で極僅かです。スウェーデンはエタノールの大量生産国でなく、ブラジルとイタリアから 輸入して、値段はガソリンよりずっと高いので、政府は次のような incentive、奨励政策を出しました。 *バイオ燃料はCO2税とエネルギー税が2009年まで免除 *そのお陰でガソリンに比べ、E85は30%、バイオ・ディーゼルは40%の値下げとなった *FFVを買うと1300ドルのボーナスが貰え、ストックホルム市混雑税(凄い税金ですね!)から免除、 保険を20%まで値引き、市内で無料駐車、車検も安く、それに会社用の車は税金20%値下げ *警察、消防、救急車を除き、政府の車購入の25%以上はバイオ燃料車でなければならない *300万リットル以上売るガソリンスタンドは少なくとも1種類のバイオ燃料を用意しなければならない その結果は2008年の1月までに、新車購入の25%はFFVになり、2001年には717台しかなかった バイオ燃料車が昨年5月までに30万台、E85を入れられるガソリンスタンドが2400所に近くなり、 600台以上のバスがED95(ディーゼル用でエタノール95%、イグニッション液5%)で走っているとかです。 ハイブリッドも低速で走るのはガソリン節約になりますが、高速だとガソリン燃焼で、バッテリーも大きくて 高価、メカニックも複雑なので、どうしてもハイブリッド車の値段はFFVよりずっと高くなります。 FFVの弱さは「馬力が無い」ことですが、果たして馬力ある車が人間に何の貢献をしたのでしょうか。 若い頃の馬鹿な経験で言えるのは「人間文化に馬力は全く貢献なし」です。もう一つの問題は寒い時に イグニッショんがかかり難いのですが、寒い時期にはガソリンの割合を増やして25%で解決しているとかです。 このバイオ燃料奨励政策は相当な金がかかったことでしょうが、奨励策にも時限があり、出来るだけ早く 切り替えが進み、バイオ燃料は何処でも製造出来るので、長期的には賢明な投資だと信じます。 原子力発電に伴う巨大な経常費、放射線廃棄物の再処理と貯蔵費、排気量取引と一緒に来る法律、監査、書類、 それに取引で払う税金(罰金)などにかかる費用自体は、直接にCO2ガス放出を全然減らしません。 それに化石燃料使用に付加される価格は上昇一方、それに比べてバイオ燃料は未だ研究中で改善の余地が 残っています。 このようにスウェーデンが1990年の基準から12%の放出ガスを減らしたのは、車の燃料をエタノールにした ばかりでなく、他の要素も沢山ありますが、何も特別に困難な技術が必要だった訳でもありません。 これを可能にしたのは賢明な政治と、長年に渡り自給自足を誇る国民の共同作業だと言えるでしょう。 この前のシェルの科学者の予測 「2050年には総エネルギーの3分の2は化石燃料が使われている」からスウェーデンは除外になります。