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                     地球温暖化−将来への対策(7)
 

                                           投稿者:風鈴  投稿日:2010年 2月16日(火)
  	

      B) バイオ燃料 2

 バイオ燃料の利点は、特別な資源が必要でなく何処でも植物から出来ることです。
 今までは面積の大きいアメリカとブラジルが圧倒的で、トウモロコシ(コーン)やサトウキビが他の農産物の
 耕作面積を取ってしまうとの意見が強かったので、アメリカ政府が自国の試算をしたら問題ないとなった
 ようです。
 但しコーンの面積当たりのエタノール生産はサトウキビよりずっと少なく、大量の肥料と水が必要なので
 不経済、それにエネルギー変換率(取れるエネルギー/使うエネルギー)も低いので、いずれ他の方法に
 変わるようです。

 ウィキペディア、http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%90%E3%82%A4%E3%82%AA%E7%87%83%E6%96%99
 にバイオ燃料の説明の中で、以下のような課題があります。
 『一般の燃料に比べ亜酸化窒素の放出量が二倍である。亜酸化窒素は二酸化炭素の約310倍の温室効果を
 持つため、地球温暖化を防止するどころか、かえって地球温暖化を促進させるのではないかと
 パウル・クルッツェン博士などが指摘している。』

 そこで参考記事 http://www.rsc.org/chemistryworld/News/2007/September/21090701.asp を読むと、
 クルッツェン博士が取った仮定と方法が誤っているとの意見もあり、現在はクルッツェン博士の意見が
 少数党で、科学者達の相反する論になると、私達には「お手上げ」です。世界のエネルギー政策が
 化石燃料から他のカーボン放出が少ない燃料に変わりつつある現在、余程の確証が無いとバイオ燃料への
 動きは止まらないでしょう。

 日本にとって国内でバイオ燃料の生産は、少しでも化石燃料依存から離れ、自給自足の手段を増やせる
 良い機会で、スウェーデンみたいに完全独立は無理とは言え、『バイオ燃料生産の研究・開発から生産』
 へ突入すべきだと思えますが、民間も政府も「少し値段が高すぎる」とか、二の足を踏んでいるみたいで
 熱意が見えません。
 民間の理由は分りますが、政府が研究開発に資金を投資しないのは、どうも何か欠け過ぎている感じになり、
 沖縄でサトウキビでのバイオ燃料を生産する予定とかですが、ブラジルの真似では「ガッカリの失望」
 になります。
 コーンやサトウキビを使わないバイオ燃料生産もあるので、そのような例を探してみました。

 アメリカのイリノイ州の会社が ”Commercializing Garbage to Ethanol ゴミからエタノール生産を商業化”
 試験工場の記事、http://www.technologyreview.com/business/23751/ が昨年10月にありました。
 このCoskata(コスケイタ?)社は木のクズや繊維を含んだゴミからエタノールを経済的に生産する機械を
 建設中で、世界中皆が試験工場で植物の繊維材料(セルローズ自体ではありません)からエタノールを少量に
 生産していますが、大量生産している会社は未だありません。

 コーンとサトウキビからエタノール生産はお酒やワイン製造と似たような方法ですが、
 セルローズ・エタノールの場合は材料を高熱の空気か水蒸気を使い、水素と一酸化炭素の合成ガス
 (シンガス、syngas)にして、そのガスに触媒と発酵する為の酵素を混ぜ、バイオリアクター(bioreactor)
 装置に入れてエタノールにするのが普通の方法とかですが、触媒を使うので高熱と高圧が要る
 (エネルギーを使う)のが弱点だとありました。

 材料をガスにするので、木や草の繊維、有機体のゴミ、古いタイヤーとか色々な材料でも良く、この
 コスケイタ社は触媒を使わず、クロストリジウムという桿菌(細菌)を入れての生化学処理なので価格が安い
 と言っています。
 しかし、現在の不況風で大量生産する工場建設への投資が無い、とは何処も同じと言えるでしょうか。

 アメリカBIO(Biotechnology Industry Organization、バイオ産業協会)の見積もりでは、このような
 試験工場で来年には700万ガロンのセルローズ・エタノールが生産され、コスケイタ社も2012年には
 5千万ガロン生産予定とかです。
 連邦政府のセルローズ・エタノール生産目標は来年までに1億ガロン(3.785億リットル)で、2022年には
 160億ガロン、10年後に160倍の生産量増加は無理みたいなので、この160億ガロンが何を意味するか
 調べてみました。

 下の表はウィキペディア http://en.wikipedia.org/wiki/List_of_countries_by_oil_consumption からで
 世界で原油を多く消費している国の順と消費量を示しています。アメリカが最大で2080万バレルを一日に消費、
 日本がアメリカの約25.7%で535万バレル。1バレルが42ガロン、1ガロンが3.785リットルで、
 原油によって違いますが、平均すると原油の約46%がガソリンになるそうです。

 そこでアメリカの一年間の大体のガソリン消費量を計算すると
 2080万バレルx365日x42ガロンx0.46 =14667744万ガロン=年に1466.8億ガロンの
 ガソリン。
 そこで2022年のセルローズ・エタノール生産目標の160億ガロンは、現在消費ガソリン量の11%くらい
 とは、人間社会が如何に大量の石油に依存しているか、そして現在のバイオ燃料は幼児期でしかない、と分ります。
 前回の表のアメリカのエタノール(主にコーン)生産量の340億リットルは約90億ガロンで、コーンからの
 生産はセルローズへ切り替えが進むようで、いずれにしろアメリカは化石燃料依存を減らそうと懸命です。

 そこで日本が現在消費ガソリンの10%をメタノールに取り替えるとすると、37.7億ガロン=約143億
 リットルが必要、今アメリカが現在生産している340億リットルのエタノール総量の約42%の量を生産
 しなければなりません。
 それを可能にするには、現在何十というエタノール生産工場を建設しなければならなく、それも無いので、
 日本は残念ながら石油依存から抜けられる様子は暫く見えません。石油使用が続く限り、公約の25%削減は、
 化石燃料使用を少なくとも15%以上削減しないと可能でなく、これから10年先にはありえないと言えます。
 エタノール輸入も一つの手段でしょうが、ブラジル以外に輸出できるほど大量生産している国はありません。

 ガソリンの10%を取り替えるだけで、このように大量のバイオ燃料がいるので、民間が試験的に始めても
 可能性がある生産方法へ政府からの強力な援助が必要で、やはり政治と国民に意思と決意がないと
 出来ないでしょう。