地球温暖化−将来への対策(8) 投稿者:風鈴 投稿日:2010年 2月20日(土) B) バイオ燃料 3 セルローズ・エタノールは木質素があれば何でもよくて、今アメリカでは下の写真にある switchgrass(又はpanicum virgatum) と miscanthus からメタノール生産が研究されていて、 政府も2007年に3.85億ドルの研究費を出したと http://en.wikipedia.org/wiki/Cellulosic_ethanol に ありました。 日本語で switchgrass を何と呼ぶのか聞かないで下さい。私の安物辞書には”switchgrass”なんか 見つかりません。 アメリカに自然と生えているデッカイ雑草で miscanthus も日本語で何か分らずですが、ススキの親戚みたいです。 このような植物に目をつけているのは、コーンと違い何の肥料や水をやらなくても中南部に沢山ボウボウと 茂るらしい。 今はどうか分りませんが、昔は有明海へ流れる川の土手や「ガタ」には、このような背が高い雑草が沢山でした。 あの草の名前は何だったのでしょうか。今でも地方の土手や川沿いに葦みたいな植物があるかもしれなくて、 何も沖縄でサトウキビ栽培しなくても、日本にも要らないセルローズ・エタノールの材料が沢山あるはずで しょうが、そのような調査もなく、沖縄でサトウキビ栽培に走るので、ガックリしました。 どのような木や草の繊維、有機体ゴミにしろエタノールへ変える原理は同じで、先ず材料を砕いて糖分を抽出し、 触媒と酵素を入れて発酵させます。前回のコスケイタ社が、クロストリジウムという桿菌(細菌)を使ってますが、 別の方法で試験生産のZeaChem会社が http://www.technologyreview.com/energy/23989/ にありました。 そのZeaChem社の生産過程が下のフローチャートで、特殊な面は発酵過程でアセトジェン(acetogen)という バクテリアを使っています。このアセトジェンは白蟻のお腹にあるとかで、考えてみると白蟻は木を食べ、 パンダ熊は竹ばかり食べてエネルギーに変えて、多くの生き物のエネルギー変換機能から学ぶ点が多く ありそうです。 このアセトジェンは糖分を酢酸エチルに変えるので、最初に抽出した水素ガスを最後に混ぜてエタノールに なります。 普通の方法より複雑ですが、酵素での発酵は大量のCO2を出し、糖分の一部をCO2と一緒に失くすのに比べ、 これは方法は全然CO2放出がないので効率がよくて、試験では1トンの材料から135ガロンのエタノールが 出来、生産効率は他の会社より35%高い、近日中に年間25万ガロンを生産予定とかですが、果たして上手く いくでしょうか。 前回のコスケイタ社は、実験でなく事実上1トンの材料から100ガロンを生産していると言ってました。 これからのセルローズ・エタノール生産は変換過程で、高価な酵素でなく微生物(バクテリア)を使うのが 主流みたいです。 日本では静岡油化工業が2008年から、「おから」からバイオ燃料を生産しているとありました。 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%90%E3%82%A4%E3%82%AA%E7%87%83%E6%96%99 に おからの量が限られているので、大量にはならないでしょうが、再び民間が政府より意図の面では進んでいます。 同じウィキペディアの参考で http://www.toonippo.co.jp/tokushuu/scramble/scramble2008/20080226.html は2008年の記事で、自ら油を生成する藻の一種「ボトリオコッカス」を培養、抽出した油をバイオ燃料とする 研究も行われている、とありました。筑波大と国立環境研究所の共同研究で、 『ボトリオコッカスは、光合成でCo2を取り込んで炭化水素を生成、細胞外に分泌する。 生産する炭化水素は重油に似た成分の油で、そのまま船の燃料に使えるほど質が高い。 収穫量は一ヘクタール当たり年間約百二十トンで、効率はトウモロコシやベニバナの百倍以上。 試算では三十万ヘクタールで生産すると、一リットル当たり百五十五円程度と現在のバイオ燃料より安くなり、 関東地方の面積があれば日本の輸入量はまかなえるという。』 関東一面が藻ばかりになるのは困りますが、意気込みは大賛成です。 アメリカで同じような藻を使い、今年から試験生産を始める予定とかの会社、Joule Biotechnologies の記事が http://www.technologyreview.com/business/23073/ に有りました。 遺伝子工学で栽培された藻で、ボトリオコッカスとは言ってませんが、多分同系統の藻に違いありません。 筑波大が日本の石油全部を供給するには関東地方くらいの面積(約3.24万平方キロ)が要ると言ってますが、 このジュール会社は、アメリカの石油総量にはテキサス・パンハンドルの面籍(約6.7万平方キロ)が要るので 似ています。 ミネソタ大学の科学者John Sheehan が書いた「バクテリアから直接バイオ燃料を取る」の記事が http://www.nature.com/nbt/journal/v27/n12/full/nbt1209-1128.html にありました。実際研究したのは、 カルフォルニア大学のShota Atsumi, Wendy Higashide & James C Liao(日系と中国系)科学者です。 遺伝子工学で変えられたはシアノバクテリア(cyanobacteria ー海や湖にある藍藻)が光合成とCO2から イソブチルアルデヒド (isobutyraldehyde) とイソブタノール(Isobutanol)の脂質を生成し、 これらを抽出するのも簡単で、前者は後者に楽に変換出来、イソブタノールは高いエネルギーの燃料、と ありました。 「イソブチルアルデヒド」 とか「イソブタノール」が何か聞かないで下さい。科学も化学も何学も無し私には 名前さえ無理です。 下のグラフは他のバイオ燃料(青は左からコーン、セルローズ、藻)と生産効率を比べてますが、上部(a)は 現状で下部(b)は将来の向上を予測ですが、イソブチルアルデヒド とイソブタノールは未だ研究中なので、 予想は無しにしています。 陸上のコーン、サトウキビ、セルローズより、水中の藻の方が早く育ち効率も高くなるので、将来性も 高いようです。 石油会社大手のイクソンが3億ドルを Synthetic Genomics という会社へ藻からバイオ燃料を開発する為に 投資すると http://www.technologyreview.com/energy/23039/ にありました。 ニューハンプシャー大学の研究によると、サウスカロライナ州くらいの面積に藻を栽培すると、アメリカの 全石油消費量を 賄える、とかで筑波大学の藻と同じ種類でしょう。世界の大石油会社シェブロン、シェル、 BP、それにダウ・ケミカル、ビル・ゲーツの会社も藻からバイオ燃料開発へ5000万ドルを投資した、 とありました。 このように多くのバイオ燃料が競争で研究されてますが、難関は価格、石油1バレルの値段が70−90ドルで 上下して、バイオ燃料の値段が100ー130ドル位になると、将来の技術改善も見込まれて、十分に競争 出来ることでしょう。 バイオ燃料も、どの一つの方法も決め手ではなく、各国が自国の資源に合った手段を取り効率を上げるのが最善で、 日本も自給自足の燃料生産への強い政策を政府に打ち出して貰いたいものですが。