地球温暖化−将来への対策(11) 投稿者:風鈴 投稿日:2010年 3月 1日(月) C) ブラジルの車とエタノール 2−3以上の参考を調べましたが、ウィキペディアの http://en.wikipedia.org/wiki/Ethanol_fuel_in_Brazil は、沢山の文献から引用してあり、 全面を良く纏めてあると思えましたので、これに沿って興味ある部分を挙げてみます。 ブラジルはアメリカに次いで2番目のエタノール生産国で、2ヶ国で世界の89%を生産。 輸出ではブラジルが一番、2008年に245億リットル(以前のREN21では270億リットル) で世界エタノール燃料総生産の37.3%を占めている。 長年の歴史があるエタノール生産は、効率が高い農産技術に元ずき、機械と安いサトウキビ材料 を使い、つぶされたサトウキビも電力発電の燃料に使用、1単位のエネルギーから8.3から 10.2倍のエネルギーを製造している。 **アメリカのEPA(環境保護省)はブラジルのエタノールはガソリンに比べ61%のガス放出 を削減する上級バイオ燃料だと指定した。 http://www.greenmomentum.com/wb3/wb/gm/gm_content?id_content=5055 **これは1リットルのエタノールの価は生産価格の8−10倍になると言う意味で、素晴らしい 効率です。 石油と言うと私達は車の燃料のガソリンを考えるので、先ず車とエタノールの関連性を見てみましょう。 ブラジルの乗用車用に純ガソリン燃料はなく、過去に混合割合が変わりましたが現在は最低20% エタノールが義務。 下の写真はガソリンスタンドで左がガソリン(Gasolina、20ー25%エタノール)、右がアルコール (Alcool、エタノール)です。 ブラジルのエタノール生産は数十年前に始まったのでなく、第二次大戦でドイツが石油国を攻撃するかも しれない恐れから、ガソリンにエタノールを50%混合した時もありました。1970年代の最初の オイルショックの時に石油不足になり、政府は「国家アルコール政策」 Pró-Álcool、ポルトガル語で 'Programa Nacional do Álcool' を出して石油依存を少なくすることにしました。 **政府はアルコール生産と消費を奨励し生産に補助金も出したり、フィアットが1979年にE100 (アルコール100%)の車を生産してアルコール消費が急増化し、今度はアルコール生産が追いつか なくて、逆にガソリンの混合比を増やしたり、それでもアルコール不足になり1980年半ばには ガソリンスタンドで長い行列が出来たそうです。 **近年に大規模な海底油田がリオの沖先にあると分り、将来は石油輸出大国になるとは皮肉です。 アルコール不足で一時的にアルコール(エタノール)で走る車に自信をなくしていたようですが、 エタノール生産量も上がり2003年にフォークスワゲンが Gol 1.6 Total Flex (完全フレックスでガソリンでもエタノールでも良い)を紹介してから皆が自信を取り戻し、 現在あるフレックス車生産はChevrolet, Fiat, Ford, Peugeot, Renault, Volkswagen, Honda, Mitsubishi, Toyota, Citröen, Nissan で日本の会社も4社あり、マツダ、スズキが入って ないようです。 2009年に売れた新車の92.3%がフレックス車で、登録された4シリンダー車の39%に達し、 2008年にエタノールは軽自動車の50%、ディーゼル車は2007年までに16.7%を 占めるようになりました。 Petrobras(国営石油会社)によると、2020年にはエタノールが軽自動車燃料の80%以上に なるだろうとの予測、更に今売れている新車の90%以上がFFVなので、ガソリン(E25)だけの 車がなくなる見込みです。 FFV、フレックス車には燃料センサーがあり、エタノール混入度を測定し、自動的にエンジンの 最適作動を調整するので、運転する人は何も調整する必要はありません。以前にエタノールの車は 馬力がないと言いましたが、それはエタノールのエネルギーはガソリンの67%しかなく、 エンジン調整なしだと、同じ量の燃料だとエタノールは67%の走行距離になりますが、 FFVはこの調整があるので70−75%くらいまでになるそうです。 ガソリンスタンド写真の下のグラフは、ブラジルの車を燃料別に分けてあり、今は青の軽自動車 (エタノール混合)が一番多く、次に緑のフレックス車が2003年より急増化、茶色の ガソリン車は落ちてしまい、フィアットが始めた黄色の100%エタノール(NEAT ETHANOL) の車は沼南ボーイさんが滞在なさった頃は未だ500万台くらい走っていたようですが、その後に 地方で車のサービスの施設が充分でなかったり、隣国へ行けないとかが原因で事実上なくなって しまいました。 ホンダの子会社、Moto Honda da Amazônia がフレックス燃料のモーターサイクル 下の写真にある CG 150 Titan Mixを生産し、気温が15度以下になるとスタートするのにガソリン20%の混合が 要るけど、既にマーケットの10%以上を占め、 昨年9月までに新車では二番目に売れたバイクに なりました。 サンパウロで2007年12月からバイオディーゼル(ED95、エタノール95%**)で走る 400台のバスを一年間試運転し、実際にガス放出を計測して燃料経済性を調べるとありましたが、 その結果は見つかりませんでした。 この試運転を援助しているのがヨーロッパ連合で、バスとED95の燃料がスウェーデンから 来ているのは不思議でありません。 http://news.mongabay.com/bioenergy/2008_01_13_archive.html **名目は95%で、スウェーデンの仕様は、93.5 % エタノール、3.6 % ignition improver (イグニッション改善液?)、2.5 % MTBE (メチルターシャリーブチルエーテル)、0.5% iso-butanol (イソブタノール) このように温室効果ガス放出を25%削減するには、何を一つやって達成出来るものでなく、 多くの面で改善するのが必要で、政府が産業の『先導者』であるべきでしょう。日本政府は 削減目的を3段階にしたり、産業界と国民に省エネを要求する以前に、事実上に削減出来る手段、 例えばバイオ燃料を奨励する政策、バイオ燃料の生産へ補助金を出す、バイオ燃料税を一時的に なくす、もっと市場に広める手段を捻出する、とかをどうしてやらないのかと嘆くばかりであります。 このような文句言う人は armchair quarterback と呼ばれ、関取に「あーしろこーしろ」の相撲批評家 と同じですが、それが分っていても「再び原子力発電プルサーマルに交付金出しますので急いで 建設を決めて下さい」では情けなくなります。