地球温暖化−将来への対策(12) 投稿者:風鈴 投稿日:2010年 3月 3日(水) 今回はエタノール生産、生産効率や地域、それに耕地面積の話になります。 ブラジルのエタノール生産量はウィキペディアの表から 年度 2004 2005 2006 2007 2008 (億ガロン単位) 39.89 42.27 44.91 50.19 64.72 というように上昇を続けています。下の最初のグラフは1998年からのバイオ燃料 (ブラジルではエタノール)生産量を示し、 2006年から急上昇、近年の増加は広い面積が あり沢山のサトウキビがあるので、生産増加は当然だとも言えますが、生産量の下のグラフに あるように生産効率が1975年以来3.77%平均の割合で伸びているので、耕作面積拡張 より農産と生産技術の進歩により増加で、現在1ヘクタール(100メートル平方)当たりの 生産が6千リットルです。 日本でも米の生産技術が随分伸びましたが、残念ながらお米の需要が減ってしまいました。 今更に進行中なのは、 *品種改良で窒素肥料が少なくても平均より3倍収穫がある品種を開発中 *第二世のセルローズエタノール生産を開発中 *サンパウロ州ではサトウキビ収穫12%、砂糖含有率6.4%、発酵効率6.2%、 砂糖抽出2%等の改善が予期され、全ての効率が29%向上し、1ヘクタール (100メートル平方)当たりで9千リットルの生産を見込みである、州政府からエタノール 生産を更に向上するために5千万ドルの研究費が準備された、とのことです。 2008年8月までに378のエタノール工場があり、126がエタノール専門、252が砂糖と エタノール、加えて15の砂糖専門、これら合計すると年に5.4億トンのサトウキビを押しつぶし、 2009年に建てられる25の工場を合わせると5.9億トンになる。 典型的な工場は年に200万トンのサトウキビを処理して、2億リットルのエタノールを生産、 サトウキビのコストは1.5億ドルで3万へクタールのプランテーションが必要であると、 ブラジルの科学者 Jose Goldemberg が纏めた記事が http://www.biotechnologyforbiofuels.com/content/1/1/6 にあり総合的な良い情報が沢山です。 3万へクタールなんて言っても、どの位広いか検討がつきません。そこで沖縄島の面積を調べたら 1207.66km²(平方キロメートル)そこで3万へクタールをkm²に換算すると300平方キロメートルに なり、ブラジルの典型的なエタノール工場は沖縄の約4分の1のプランテーションがあるとなります。 政府が沖縄で始めたエタノール試験生産は、そのような面積がある訳もなく、ブラジルみたいに 何十年間のサトウキビ品種改良と生産技術の蓄積もないので、子供の遊びみたいになります。 下の地図は Jose Goldemberg の記事からで、赤い点がサトウキビ(エタノール)生産の地域で、 ブラジルは森林採伐で非難されてますが、サトウキビ栽培は高原に多くCO2吸収なので、サトウキビ 非難は的はずれでしかありません。 サトウキビ生産はサンパウロ州が圧倒的に多くて総生産の60%、左下のパラナ(Paraná)州が8%、 右上のミナス・ジェライス(Minas Gerais)州が8%、その左のゴイアス(Goiás)州が5%、 で80%以上がこの地域にあり、収穫期は4月から11月まで、東北(右上)に、この前に話していた リオ・グランデ・ノルテ州は生産してませんが、その南の3州が10%を生産していて、収穫期は 9月から3月というように、南部とは気候が違い期間もずれているので、ブラジルの年間生産の表示は 2007/08という具合に新年を跨いで示されてます。 そこで2008/09年度のサトウキビ、エタノール、砂糖生産と耕地面積は: *収穫されたサトウキビの44%は砂糖になり、1%は飲むアルコール、55%がエタノールになる *エタノール生産は249億リットル(65.8億ガロン)から271億リットル(71.6億ガロン) の予定 *その内の輸出は42億リットル(総生産の16−17%)で24億リットルはアメリカ *2007年の輸出は35.3億リットル、内訳はアメリカへ26.4%、ヨーロッパへ28.4%、 日本へ10.3%輸出された 注:輸出量は年毎に変わる *サトウキビの耕作面積は2007年から2008年にかけ80万ヘクタール増えて780万ヘクタール になった *ブラジルの全耕作(可能)面積は2.76億ヘクタールで、72%が草原、その草原の16.9%が 農作物、2.8%がサトウキビ *サトウキビ面積は全耕作可能面積の1.5%になる 上記 Jose Goldemberg の情報では全耕作面積が2.97億ヘクタールで、サトウキビが2%、コーンが 4%、大豆が7%、その他6%になっています。サトウキビは何にも使われてない草原とかに植えて あるので、農作物の土地を減らしていなく、ブラジルの生産効率は世界一ですが、それでも780万 ヘクタール(7万8千平方キロ、北海道の94%くらい)の面積が要ります。 大陸には何にも使ってない広い土地がありますが、日本にはそれが極僅かなので、ブラジルの真似をしても 意味がありません。 先日の「 B) バイオ燃料 2 (2月16日)」に仮の粗い計算でしたが 「日本が現在消費ガソリンの10%をメタノールに取り替えるとすると、37.7億ガロン=約143億 リットルが必要」でした。 143億リットルを生産するのに、ブラジルの将来の1ヘクタール当たり9千リットルの高い生産効率で 計算すると 約160万ヘクタール、1.6万平方キロメートルの耕地面積が要り、これは四国 (1.83万平方キロ)の87%の面積が必要、 これは、どう考えても不可能で、要らない雑草から セルローズ・エタノール生産研究、もしくは先日2月20日のグラフにあった効率からでは1ヘクタール 当たり4万5千リットルの将来性がある水藻(Algal lipids)の方が日本に向いているでしょう。