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                        地球温暖化−将来への対策(13)
 

                                            投稿者:風鈴  投稿日:2010年 3月 6日(土)


      C)ブラジルのエタノールの値段

 今回は大切な「値段」についてです。

 どのようなエネルギー源にしろ社会で一般化されるまでに少なくとも30年かかる、
 と石油会社シェルの科学者が書いた記事を2月 1日に 
 http://www.nature.com/nature/journal/v462/n7273/full/462568a.htmlで引用しました。
 ブラジルのエタノール生産も石油ショック後に本腰を入れ 「国家アルコール政策」、
 'Programa Nacional do Álcool'を始めたのが1970半ば、それからブラジル国内で
 成長し安定するのに、やはり30年かかりました。

 デンマークのロムボーグ統計学教授の記事 
 http://www.spiegel.de/international/world/0,1518,665703,00.htmlを以前に何回か
 引用しましたが、このような部分があります。
 ”The most effective policy response would be to dramatically increase public funds 
   on research and development into non-CO2 based energy. Rather than making fossil 
   fuels more expensive, we need to make alternative energy cheaper.”
 「最も効果的な政策対処は、CO2を出さない燃料の研究・開発へ公の基金を格別に
 増やすことであろうう。
 それに化石燃料使用を高くするより、代わりのエネルギーを安くする必要がある」

 これは確かに正しいのですが、新しいエネルギー源が幼児期の時は、奨励する為に化石燃料を
 高くしたのが、スウェーデンもブラジルも取った政策です。ブラジルのエタノール生産は政府から
 の補助金なしでやれる所まで達しましたが、今でもガソリン税が高く、州によって違うようですが、
 ガソリン税は54%、エタノール税は12−30%で、例として2008年10月の市場の値
 ではE25(エタノール25%)が1ガロン4.39ドル、エタロールが2.69ドルでした。

 ガソリンの値段は、政府がエタノールを使った方が少し得になるように税金を調整している様子です。
 以前にエタノールのエネルギーがガソリンの67%と述べましたが、ガソリンエンジンの圧縮比
(Compression Ratio/CR)が8対1に比べ、エタノールは12対1に出来るので、総合すると
 エタノールの走行距離はガソリンより20%短くなる、と前回に引用した 
 http://www.biotechnologyforbiofuels.com/content/1/1/6 にありました。
  しかし実際には25−30%になるみたいで、エタノールの値段が30%安いとガソリンより
 経済的となるようです。

 下の地図はブラジル国内でガソリンとエタノールの値段がどの位違うかを示し、青いサンパウロ(SP)州、
 隣のパラナ(PR)州、真ん中の人口が少ないマトグロソ・ドスル(MT)州は生産地ではエタノールが
 40%以上安い、人口が高い大西洋側の州はほとんど黄緑で30−40%、アマゾン川に沿った
 パラ(PA)州とアマゾニア(AM)州は人口密度も低く消費量も少なく、パラ州ではガソリンの方が
 エタノールより安くなります。
 参考までに面積を日本と比べたらパラ州だけで日本総面積の3.3倍、これでは値段の違いもある訳です。

 ガソリンとエタノールの値段比較が地図の下のグラフで、横の目盛りがエタノール(累積)生産量、
 縦が値段です。
 赤い線はオランダのロッテルダムのガソリン値段で、他国と比べる参考として入れたようです。
 茶色の細いのがブラジル国内でのガソリン、青がエタノールの値で、ガソリン税が凄く高いのが分りますが、
 最近はエタノール生産量が増えて、生産効率も上がり、2005年にはロッテルダムのガソリンより安く
 なりました。
 天候によりサトウキビの収穫が変わるので、エタノールの値も上下がありますが、石油1バレルの値が
 30ドル以下にならない限りガソリンと競争出来るそうで、最近は1バレルが90−110ドルくらい
 ですので、ブラジルのエタノール生産は、今後に値段でも有利な立場に立つことでしょう。

 生産価格に関してですが、エタノールは hydrous(ハイドラス、水分5%)とanhydrous
(アンハイドラス、水分1%)の2種類に分けられ、一番下のグラフは1990年からの生産量、
 HYDROUS(緑)と ANHYDROUS(黄色)、両方合わせた総生産量が青のカーブです。生産後のエタノール
 (アルコール)には水分があり、それを蒸留の繰り返しで 濃度を高めますが、重さで最高の濃度が 
 95.63% 以上には出来ません。
 それは共沸点があり、液体の濃度と蒸気の濃度が同じになるので、それ以上にならないと
 今回初めて知りました。

 フレックス車にはハイドラス(水5%)を使い、ガソリン(エタノール25%)はスペック(仕様)で
 アンハイドラス(水1%)を混入です。95%のエタノールから99%にするは他の液体、ベンゼンとかを
 加え蒸留を繰り返すのですが、このハイドラス(水5%)をアンハイドラス(水1%)にするのに
 10−20%余計な費用がかかるとhttp://www.greencarcongress.com/2008/01/study-compares.html 
 にありました。

 最近オランダの Process Design Center (PDC) という研究開発会社の化学者が「アンハイドラス(水1%)
 にする安価な方法を実験する」と会社のオーナーに提案したら「どうせやるのなら、ハイドラス(水5%)
 エタノールとガソリンを混ぜて、それから3液体に分ける方法を研究しよう」となりました。
 ところが水とエタノールを分離するのが極端に難しいので「では水分を残したままでエンジンがどのように
 作動するか調べよう」となったそうです。エンジンの作動とか効率をハイドラス(水5%)とアンハイドラス
 (水1%)で調べたら、ハイドラス(水5%)の方がむしろ良いと結論がでました。
 この話題だけでも長くなりそうですので、又別に取り組むことにします。