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                     地球温暖化−将来への対策(15)
 

                                         投稿者:風鈴  投稿日:2010年 3月13日(土) 

 C) エタノールの水分: hydrous(ハイドラス、水分5%)とanhydrous(アンハイドラス、水分1%)

 この課題はエタノールを燃料として生産又は混合している産業に関係し、ブラジルと直接関係ありませんが、
 エタノールの話ばかりでしたので、ついでに取り上げることにします。

 前回にオランダの Process Design Center (PDC)研究開発会社のテストで分ったのは、
 「ハイドラス(水分5%)をガソリンに混入しても、アンハイドラス(水分1%)と大して性能は
 変わらない」ということでした。
 ハイドラス(水分5%)からアンハイドラス(水分1%)を製造するには、ベンゼンとか他の液体を加え
 蒸留を繰り返すみたいですが、この変換工程がアンハイドラス(水分1%)製造価格の10%以上なので
 大いに意義があります。

 この工程がアメリカの輸入で奇妙な役割を果たしています。アメリカはメキシコとカリビア諸島の
 ジャマイカ、コスタリカ、エルサルバドル、トリニダッド等の国々を援助する為に、加工製品への輸入税
(関税2.5%とガロンに付き54セント)を免除するという「Caribbean Basin Initiative (CBI)、
 カリビア諸国援助協定?」に同意しました。
 ブラジルの総エタノール生産の20%は輸出で、2007年には総輸出の26%以上がアメリカ、同様に
 25.8%がカリビア諸国へ輸出されました。カリビア諸国にエタノールの需要は無いのですが、
 ハイドラス(水分5%)を輸入し、アンハイドラス(水分1%)に加工してアメリカへ輸出、これが
 免税なので商売になっています。

 下の表はウィキぺディアからでブラジル・エタノールの主な輸出先ですが、日本も10%くらいの常客、
 ヨーロッパではオランダが大量、それにスウェーデンも日本と同じくらい、カリビアン諸国は又アメリカへ
 輸出、結局はアメリカが50%以上 買っていることになります。アンハイドラス(水分1%)が必要で
 ないとなったら、この又売りも商売にならないでしょうが、そこに落ち着くまで数年以上かかること
 でしょう。

 オランダPDC社のテストの結果
 『Hydrous Ethanol Can Be Effectively Used In Most Ethanol/Gasoline Blending Applications、
 ハイドラス・エタノールはほとんどのエタノール・ガソリン混合へ効果的に使える』という記事が
 2008年5月のエタノール生産業界誌、Ethanol Producer Magazine で紹介されたと
 http://renergie.wordpress.com/2008/07/29/hydrous-ethanol-can-be-effectively-used-in-most
 -ethanolgasoline-blending-applications/ にあり、この経緯が面白いので少し説明します。

 PDC社がガソリン、純エタノール、水に分ける実験をしてましたが、普通は liquid-liquid extraction 
 column(液体抽出菅、どういうものか知りません)を使い、それで2種類の液体が完全に分かれると
 推測されてました。
 ところが研究者はそうでないと気ずいたのです。二つの液体の密度(比重)が近いので分離するのに
 長い時間がかかり、実用的でない大許容の抽出菅が必要となり、「それでは水分を入れたままでは、
 どうなるか」となったそうです。
 
 その試験で分ったことは『ハイドラス・エタノール(水分5%)はアンハイドラス(水分1%)より
 5倍水分を吸収する』でした。
 ガソリンに水分が入るのはダメだと長年の固定観念になってました。多くの金属が使われているエンジンや
 パイプラインに水分があると錆(酸化)を起こすからです。そこで水分5%ハイドラス・エタノールは
 ガソリンに混入出来ない、水分1%アンハイドラスだけを混入してました。

 ところが蒸留過程からあるハイドラの水(H2O)はエタノール(C2H5OH)の炭素(C)が水の水素(H)と
 絡みあっているので分解しなく、外からの水分も吸収して、外へ水分として出さないので錆を起こすことも
 ない、そこでりハイドラス・エタノールをそのままガソリンに混ぜても良いし、パイプラインにも問題ない、
 となりました。

 この説を業界の会議で発表したら、最初は「燃料業界が間抜けと言うのか」とか受け入れられなく、
 PDCの顧客でもある多くの主要石油会社も信じない、シェル石油は「ガソリンの水分については全部
 知っている」でしたが、シェルの試験は20年前の古いデータ、PDCの技術レベルへの信頼もあり無視
 できなくて石油会社でもテストしたら PDCの結果と同じになったので驚いたそうです。

 何十年間もエタノール産業界で研究していた専門家が「水はエタノールから抜かなければならない」と
 信じていたのが、そうでなくても良いとなりました。アンハイドラスを製造する必要もなく、両方を分けて
 貯蔵することもないので、全体で10%以上、場合によって45%の節約になる、ブラジルは既に混合を
 しているので問題なし、難しいのはアメリカ連邦、州政府、石油会社、パイプライン経営者を「ハイドラス
 混合は賢い革新である」と納得させることだ、と言ってます。
 何にしろ今までより良い新しい方法が見つかると、多くの人は「ホントかいな」と疑いの目で見るのは
 通常ですが。

 オランダのTNO自動車研究所とオーストリアのSGS Drive 技術研究所がフォークスワゲンのゴルフ 5 FSI を
 調整なしでHE15 (ハイドラス15% 混合のガソリン)燃料で試験したら、アンハイドラスより走行距離が長く、
 高い thermodynamic efficiencies(熱動力効率、何の意味か分りません)が得られた。
 アメリカのエネルギー省と the American Coalition for Ethanol (ACE、エタノール連盟会?)のスポンサー
 で2007年型のフレックス・シェボレーにE20(ハイドラス20%)燃料でハイウェイ走行距離のテスト
 したら、普通のガスより効率が15%高いし、それに有害な排気ガスも少なかったとの記事がありました。
 http://fieldtopump.wordpress.com/2009/04/22/anhydrous-ethanol-vs-hydrous-ethanol-in
 -gasoline-blending/ 

 残念ながら熱力学にも(『にも』を強調』)疎いので、水とエタノールの蒸発点がガソリンより高いので
 効率が上がる、とか細かい点は理解出来ません。このような理由でエタノールのエネルギーがガソリンの
 67%しかない比率がエンジンでの燃焼に当てはまらず、もっと高いエネルギー効率になると言ってます
 現在ドイツとオランダ政府が基金を出してハイドラス(水分5%)とアンハイドラス(水分1%)のE0、
 E10, E25, E50、E85全部をテストして全面の特性を調べ、何が最適であるか試験中であるとのことです。