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                     地球温暖化−日本は何が出来るか (2)


                                              投稿者:風鈴  投稿日:2010年 3月25日(木)


  	25%削減は可能か 2

  下の最初のグラフは再び同じ環境研究所の日本国温室効果ガスインベントリ報告書からです。
  1990年以来の部門別のCO2排出量で1990年の棒を見て下さい。前回の総排出量が1,208、
  この表はCO2だけの1,143になってますが、25%削減は同じ9億トンで、1990年を見ると
  下の3部門、エネルギー変換部門(発電所)、産業、運輸部門だけで既に9億トンで、後の業務その他、
  家庭、工業プロセス、廃棄物、その他等を全部切り取って9億トンになり、これだけで如何に難しいか
  分かります。

  そこで政府は全部の部門が現在のレベルから皆一律に33%減らせ、と言うのでしょうか。多くの産業は
  常に効率改善をしたので、これ以上改善できないのが実状です。ところが、ある産業、例えば発電所は
  過去の政策が貧弱だったので65%以上の電力が重油・石炭燃焼で発電され、これ等の発電機をガス複合
  に切り替えるだけで50%削減になります。
  そこで誰が「どの部門は何%削減しなければならない」と言うのでしょうか。
  これは技術の問題でなく、費用が絡まる人間社会の問題で、中国みたいな独裁政党でないと
  不可能でしょう。

  それに標準がないのが大問題です。国内全部の放出源が現在から一律に33%削減する、が標準に
  なるのでしょうか。
  二番目のグラフは最初のグラフを同じですが、各部門別に1990年から何%増加又は減少してるか
  分かります。
  一目で分かるのはエネルギー変換(発電所)で1990年より38.4%増えています。これは
  重油・石炭燃料の火力発電が増えたからで、一方では工業プロセスは13.7%減っているのは
  この間に改善があったから、と憶測します。
  そのように一律に33%削減は意味がなく、誰が賛成するでしょうか。
  これまでに何の規制もなく、急に不可能な目的を法律化しても実行できないのが当然です。

  前回の環境省の検討会で議論の一項目として提案されたのは、C)  温暖化対策税の導入 でした。
  この税金に関連してですが、フランスの議会が決議したカーボン税が二日内で施行される予定
  でしたが、最高裁判所が「大会社には抜け道が多すぎる」の理由で違法の判決を下した、と
  http://www.france24.com/en/20100323-france-carbon-tax-ump-fillon-sarkozy-setback-environment
  にありました。サルコジ大統領は温暖化と戦う強力な手段だと期待して、この税から今年15億ユーロ
  の歳入を予算してましたが、この歳入が無くなり、これだけでさえGDPの8%の赤字になるようです。

  この例で分かるように「温暖化対策税の導入」といっても誰がどれだけ払うについてさえ複雑で、
  同意も困難です。
  そこで部門別にどの辺で削減できるか、あくまでも無知な素人の手が届く範囲で想像してみましょう。

  発電所: この増加は電力需要が増えたので、需要を満たす為に電力会社が重油・石炭燃料の火力発電を
  経済産業資省の認定で増やしたので、電力会社だけを責めることは出来ません。
  CO2放出がない原子力発電所は計画から発電までに10年以上かかり、急な需要増加に応えられなく、
  政府の長期的計画、又は政策が無いのが一番の欠点です。

  昨年11月 9日ー12日に「再生可能エネルギー」でドイツのsmart energy management(賢いエネルギーの
  使い方)技術について話してました。今は何処でも smart grid (スマートグリッド)と呼んでますが、
  日本の電力会社の順応性と効率は貧しく、この部門は楽に40%削減の余地があります。
  今回の環境省の検討会が指摘したように、電力会社は正に「制度や費用の問題などさまざまな障壁があり」
  「原子力発電所の稼働率の向上」も必要で、これがきっかけで電力業界の大巾な解体が出来たら
  素晴らしいものです。

  産業: これは業界の分野も種類も多すぎて素人が立ち入れる部門ではありません。
  全体で余り上がってませんが、組織改善のお陰でしょうか、生産工場を海外に送ったからでしょうか、
  一概には言えません。

  運輸: これも大きく上がっている部門ですが、需要が増えて使用燃料(主に石油)が増えただけです。
  これを如何に33%削減できるか?電気車、ハイブリッドを猛烈に増やす、そうなると全体の価格も
  上がるので、ブラジルみたいにフレックス車の方が安価になる可能性が大いにあります。現在の運輸と
  サービスを落とさないでCO2放出を3分の1減らすには、現在石油使用量の3分の1を他の燃料に
  代えなければならないでしょう。

  業務その他: この部門は正確に何を含んでいるのか分かりません。オフィスとかの電力使用量とも
  思えますが、そうすると発電所の放出増加に繋がり、如何にして業務その他部門へ放出量になったか
  分かりません。

  放出が大きい部門から始めましたが、これ以降の家庭、工業プロセス、廃棄物、その他は全体からの
  割合が少ないので33%減らしても意義がありません。この部門を合計しても全体の10%くらい、
  そこで33%を減らしても全体の3%の削減になるだけです。それでも有意義な削減ですが、
  これから10年間で33%削減を達成すのが如何に困難であるか、
  次回に私達に身近い家庭電気消費を見てみましょう。