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                        地球温暖化−日本は何が出来るか(8)
 

                                           投稿者:風鈴  投稿日:2010年 4月11日(日)  	


            外国依存 5 化石燃料の価格

  何のエネルギー源にしろ、価格が一番大切ですので、ここで石油と天然ガスの価格を見てみます。

  下の最初のグラフは二種類の石油価格で、上はニューヨーク・マーカンタイル取引所で質が良い石油の取引価格、
  下がガソリンスタンドで小売り価格、二つのグラフは年間が違うので引き伸ばしたりで年を合わせてみました。
  こうして見ると、取引所の価格の上がり下がりは小売り値と同じようなもので、2004年以後の急上昇は
  世界的な傾向で、前回に、PDVSA(ヴェネぜラ国有会社)ストライキ、イラク戦争、アジア(中国とインド)成長、
  ドル安が高値の原因だと説明がありました。

  2番目のグラフは天然ガスの価格で、日本(赤)、ヨーロッパ(緑)、アメリカ(青)の価格推移です。
  注意して見ると何処でも2000年から2002年の間にピークがあり、上の石油価格にも同じようなピークがあります。
  ガス価格は2004年から急上昇、石油も同じ、石油価格はアメリカでの価格で2006年後半に少し下がりましたが、
  アメリカのガス価格も下がりました。これを見て、天然ガスの価格は石油価格と直結されてると言えるでしょう。

  天然ガス生産はほとんど油田からで、原油が含まれたガスも多く、他の気体、窒素や酸素、炭酸ガス、硫化水素ガス、
  亜硫酸ガス、硫黄酸化物ガスなど燃えないガスを除かなければならないので精油工程と似ています。参考の
  http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A9%E7%84%B6%E3%82%AC%E3%82%B9 を御覧下さい。

  天然ガスは主にメタンガスですが、産地により他の燃えるガス、メタン、エタン、プロパン、ブタンなどが含まれている
  割合も違い、アラスカ天然ガスはメタン99.8%、ブルネイからのは89.8%という具合です。
  ガスのある地層は油田層より深いのが多いらしいのですが、採掘方法や機器も同じ、だから石油価格と同じになる、
  とガス業界が説明してますが、第二次大戦以前は油田から出て来る高圧ガスを皆が燃やしていました。油田の高い塔から
  燃えている炎の写真がよくありますが、あれは地下から出て来る高圧ガスの圧力を減らす為に燃やし、「ガスフレア、
 gas flare」と呼ばれてます。最近の報告では、メタンガスを大気へ放出すると温室効果がCO2の23倍あるとかで、
 現在でもガス処理施設がないロシア、ナイジェリア、イラン、アルジェリア、メキシコ、ヴェネゼラなどの多くの油田で
 ガスを燃やしていて、石油出産国のCO2放出は、このガスフレアが主な原因になるくらい大量のガス燃焼です。
  このように多くの油田で、ただ燃やしているガスが石油と同じ価格というのもおかしいものです。
  天然ガスの価格が石油価格に直結されているのが、フェアーな価格競争の障害になっている、と言う記事が
  http://www.nytimes.com/2008/10/29/business/worldbusiness/29iht-rengas.17346943.html?_r=1
  にあり、どうして天然ガスの価格が石油と結びついているか説明されてます。

  石油価格は多いに需要・供給により価格が決まっていると言えるでしょう。2004年以後の急上昇は中国・インドの
  生産高増加に伴い、供給以上に需要が増えました。これ等の途上国の経済発展が続く限り、価格が下がる
  見込みはなさそうです。ところが天然ガスの消費量は石油ほど多くなく、需要も石油と同じように上がる訳ありませんが、
  石油価格と結びつけると、ガス生産会社の利益も上がるので価格連結は止められません。

  イギリスのエネルギー監査委員の意見、「石油と天然ガスは違った燃料で、同じ価格とは全く理に合わない」は
  全く正しいのですが、他の理屈でない理由が絡まっています。それは多くのガス会社はガス生産会社と「長期契約」を
  結びたく、特に日本の会社は長期的エネルギー確保が最優先なので、競って長期購買契約を結びます。
  購買価格は他に良い標準も無いので、例えば購買時のニューヨーク・マーカンタイル取引所の石油価格の90%になる、
  というように繋げられてしまい、そこで石油価格が上がると天然ガス価格も上がる訳です。

  ヨーロッパ連邦は、この価格連携を切り離すのに少しは成功し、イギリス市場価格に一時的に効果があったとかですが、
  ガス生産のオランダとノルウェーが未だ石油価格を基準、それに主要供給国のロシア、アルジェリアも同じなので、
  両方の価格分離も座礁しているのが現状と言えるみたいです。

  経済学者達は両方間の価格は複雑であると言ってます。アメリカ・エネルギー省の研究によると、高い石油価格は
  天然ガス需要を招くが、石油と天然ガスは同じ生産地なので、石油生産増加は天然ガス生産増加にもなり、
  それが天然ガス価格を安くする圧力となる。高い石油価格が「ガスだけ」の採掘を促進し、アメリカ・ガス協会によると、
  現在アメリカで行われている開発事業の80%は「ガス田」で、石油と天然ガスの価格分離が起こりつつある、
  と言ってますが、多くの「長期購買契約」があるので、完全に分離するのは無いとの意見もあります。

  このように価格の面を見ても、エネルギー源生産国でない日本は、化石燃料生産、それらの価格には
  微々たるコントロールも無しで、このような外国依存度が続く限り、日本には安定した経済社会は難しいでしょう。
  この依存度を短期間で変えることは出来ませんが、近い将来にそれを少しでも緩和しようとのエネルギー政策、
  つまり政治があって初めて、暗いトンネルの出口が見えるようになるとしか言えません。