低温焼鈍可能電解銅箔(『Super‐HTE』):クラス皿箔より更に熱間伸びが大きい銅箔も開発された。 商品名を『Super‐HTE』(Super High Temperature Elongation)といい、スーパー コンピューター用高多層板(42層)に使用された。スルーホール部のフォイルクラック が生じる危険性をさけるためである。この銅箔はとくに柔軟性に富み、ポリイミド基材 に接着すれば変形可能なフレキシブルプリント配線板(FPC=Flexible Print Circuit) となり、カメラのような狭い複雑な形状のスペースにも納まる。カメラの電子化に 大きく笥与した。また耐折性も優れ、携帯電話やパソコンの折りたたみ部分の基板に 採用され、それら製品の信頼性向上に大きく貢献している。 超低粗度箔(『VLP):一般に析離箔の析出面は凹凸状であることは前に述べた。電解の製造条件を変更 することによってその凹凸を小さくした超低粗度箔も開発された。商品名『VLP』 (Very Low Profile)として販売されている。またこの銅箔は抗張力が極めて高い。 最近はテレビもパソコンも液晶(LCD)が主流である。それらの製品には多量のTAB(注2) (Tape Automated Bonding)が使われる。TABはICを配線自体で支持し、しかもその 回路パターンの線幅はかなり細い。そのため抗張力が大きく、微細化ができる配線材料が 求められる。超低粗度箔はその要求を満たす最適材料である。この箔の品質改善は著しく、 いまでは線幅20ミクロンまで可能となった。披晶用実装材料にはTABのほかCOF(注2) (Chip on Film)があり、その配線材料にも超低粗度箔が使われる。まさに液晶製品の進化 を陰で支えるすぐれものである。 両面平滑箔(『DFF』:超低粗度箔の析出面よりも更に平滑な銅箔、すなわち析出面があたかもドラム面の ような両面平滑箔である。商品名『DFF』の両面平滑箔はまた『Super‐THE』以上の耐折性 を持ち、ポリイミド基材との強い接着力(引き剥がし強さ)を有する。大型液晶用には TABに変わりCOFが使われ、その回路パターンの微細化は年々進む。最近の回路ピッチは 3μm(線幅15μm)である。それを可能にしたのが『DFF』で、液晶大型化の推進の役目を 果たしている。 キャリア付極薄銅箔(『Micro Thin): 厚さ3μmほどの極薄箔そのものを単独で取り扱うのはきわめて 難しい。そこで剥離剤を塗布した析離箔をキャリアとし、その表面に厚さ3μmほど銅を 電析させたキャリア付極薄銅箔が開発された。商品名『マイクロシンまたはMicro Thin』 はそのひとつであり、極微細プリント配線板に使用される。片面にキャリアの箔が付い いるため仮にピンホールがあっても事前に検査することは不可能に近い。いいかえれば、 この銅箔は限りなく無欠陥であることが求められる。そのため最新技術の粋を結集して 作られている。 (注2)TAB、COF:いずれもIC実装材料の一つ。IC接合部のベースフィルムをくり貫き接合部の導体を 露出させたTABに対し、COFはベースフィルムを残してパターン形成しICをその上に接合加工する。 厚みによる分類 厚さ9μm以上:これまで電解法の違いによる銅箔の種類とその用途について述べてきた。銅箔の機能は大きく いって銅箔固有の物性と厚さに左右される。たとえば『DFF』を用い線幅15μm(回路ピッチは 30μm)の幅の回路形成がやさしい。一方、厚さが薄くなるほどマイクロポロシティ(微細孔) やシワなどの欠陥発生率が上昇しやすく、巻き取り中の箔切れも起こりやすい。その結果 歩留まりや生産性の低下を招く。銅箔の標準的な厚さは、従来70μm、35μm、18μmが主体で あった。前述のとおり電子機器製品の軽量・薄型・小型化、高性能化にともない12μm、9μmと いった薄肉箔が求められ、日本の銅箔メーカーは生き残りをかけその開発にしのぎを削った。 新装置の導入、工程や設備の改善などにより最近では12μm以下の薄肉箔を大量かつ安定的に 製造できる。勿論特殊用途向けに70μm以上の銅箔も供給できる。 厚さ9μm 未満:前述のとおり極薄銅箔(約3μm)は通常キャリア付である。基材に接着後キャリアを剥ぎ 取り、エッチング工程を経て極微細プリント配線板に仕上げる プリント配線板以外の用途 銅箔はリチウム電池の集電体やプラズマテレビの電磁遮蔽板に使用され、プリント配線板以外でもIT発展の 一翼を担っている。