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潜行三千里を読みました。
著者は元大本営参謀辻政信
著者のプロフィール(本書から引用)
ーー明治35年生まれ。陸軍士官学校を首席で卒業後昭和6年陸軍大学卒業、その後大本営参謀となる。
ノモンハン事件、マレー作戦、ビルマ作戦などを指揮、「作戦の神様」とうたわれた。
敗戦直後、連合軍支配下のタイを脱出し、日中連携を企画して数年間、東南アジアや中国大陸を潜行した。
その後、奇跡的帰国を果たし、昭和27年から連続4回衆議院議員に当選したが、昭和36年参議院議員として再び東南アジアに向かいラオス付近で行方不明になった。ーー
本書は昭和20年ビルマを皮切りに潜行し、上海、青島から昭和23年5月に佐世保に引き上げてくるまでの、潜行三千里の記録である。
「三年間の見聞秘録」は日本上陸の際、布団の中に縫い込み、税関やアメリカ憲兵の調査を潜り抜けた。
また、本書は著者が後年補遺したものを含め2016年に発行されている。
辻政信といえば半藤一利さんの著書の中に出てきます。
半藤さんは、ノモンハン事件で2万数千人の命を無駄にした首謀者と言い切っています。
また、その著書の中で大本営参謀について、
「当時の陸軍のエリートたちが根拠なき自己過信を持っていた」「驕慢なる無知であった」「エリート意識と出世欲が横溢していた」「偏差値優等生の困った小さな集団が天下を取っていた」、一番最後に「底知れず無責任であった」
と酷評しています。
ノモンハン事件についてはNHKスペシャルでも取り上げられて、当時の陸軍それも参謀を批判的に捉えていました。
本書を読んで、タイから中国上海までの潜行三千里(逃避行?)(ビルマ・マンダレー、ラングーン。タイ・バンコック。ラオス・ビエンチャン、サバナケット。仏印・ビン、ハノイ。中国・昆明、重慶、南京、上海)のきっかけはマッカーサーの裁きを受けて死刑になりたくなかった。からと言っています。
この間にマラリアに3回、疑似コレラに1回なって生死の境をさまようが、奇跡的に命を取り留めています。
また、この間日本の日蓮宗の僧侶に化けたり、浄土真宗の僧侶に化けたり、北京大学の教授に化けたりして逃げ延びています。
潜行期間はわたしが想像したよりもはるかに恵まれていたのは、期間中日中連携を企画したことにより、中国にその賛同者が少なからずいたように書かれています。
全体を通して感じたことは、彼の不屈の精神力と体力に驚かされたし、頭の良い人だけに読んで面白かったです。
ただ、皇国史観が骨身にしみていて、自らの作戦で多くの死者を出したことへの反省はなく、当時の軍隊(特に陸軍)が日本の敗戦をもたらしたことへの反省も全くありませんでした。
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