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20190605
天声人語から引用します。
最近の統計によれば、日本の殺人事件の約5割は、親子間や夫婦間など親族のなかで起きている。
そんな事実から、以下のような結論を導けるだろうか。
「家族は、殺人に手を染めかねない犯罪予備軍である」
何をばかな、と思われるか。
いやいや案外まともな議論かも知れない。
たった一人の容疑者のイメージから、犯罪とひきこもりを結びつけることに比べれば。
1週間前に川崎市で児童が殺傷された事件で、自ら命を絶った男の暮らしぶりに注目が集まった。
事件の後すぐ、引きこもり経験者の団体が声明を出している。
先入観で事件と関連付づけるような報道は「無関係なひきこもり当事者を深く傷つけ、誤解と偏見を助長する」。
しっかりと胸に刻みたい。
やりきれないのは、その後に起きた東京都練馬区の事件である。
70代の父親が40代の息子を殺害したとされる。
父親は「長男は引きこもりがちだった」と話し、川崎市の事件に触れて「長男が子どもに危害を加えてはいけないと思った」との内容の説明をしているという。
1980年代末の連続幼女誘拐殺人事件を覚えているだろうか。
容疑者の趣味嗜好が「おたく」の特徴だとされ、アニメやマンガの熱心なファンたちが白い目で見られた。
しかしいま、おたくが犯罪予備軍だと考える人はいないだろう。
仕事から孤立した人への支援が、この国にはまだまだ足りない。
相談の仕組みや居場所をどう広げていくか。
誰かを危険人物扱いすることとは全く違う話である。
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