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ーー3・11の翌年に誕生したのが今の安倍政権です。
樋口さんはこの間、国会周辺にも出て近代立憲主義の大事さを訴えましたね。
「憲法改正草案を出した12年以降、自民党は5回の国政選挙で勝利し、それを正当化の根拠にしています。
そうした状況だからこそ、それでも権力は抑制的に使われるべきだという近代立憲主義が存在意義を強めたのです。
たとえ時の民意が圧倒的に支持した場合であっても、権力が自己抑制しなければいけない局面はあります」
ーー世界で今、日本国憲法はどういう位置にいるのでしょうか。
「憲法から『先輩国が逃げ出す』風潮に直面していると思います。
明治以降の日本が憲法を考える際のお手本にしてきた欧米で、憲法から逃げ去る傾向が見られる現象です。
典型はトランプ大統領の米国でしょう。
ほかならぬ西欧デモクラシーの総本山で、反リベラル化が進んでいるのです」
ーー日本がお手本になる時代がやってきたのでしょうか。
「逆でしょう。米国には、日本よりはるかに強靭な『政権への抵抗の岩盤』が形作られてもいます。
強権政治が台頭したとされるポーランドやハンガリーにも反発する力は現れている。
政権の金権腐敗を追及するジャーナリストが暗殺された東欧スロバキアでは、抗議する人たちの中から、45歳の政治家としては素人に近い女性が大統領選挙で当選しました」
「日本では、遠くから見れば表面的には大きな波風が立っていないように見えるのかもしれませんが、フェイクが横行し、すべての議論の前提である『言葉が持つはずの意味』が失われています。
深層で何かが溶解し始めた状況、頑丈だと思われてきたものが崩れ去り始めている感覚があります」
「人口の減少、財政の破綻、国としての友人がいない日本の姿・・・・。
ぼけっとしていていいのか、と言いたくなります。これは決して自虐ではありません」
(終わり)
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