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恩田陸さんの「蜜蜂と遠雷」を読みました。
この小説は2018年の本屋大賞と直木賞を同時に受賞した500頁からなる大作です。2年前の本屋大賞、宮下奈都さんの「羊と鋼の森」はピアノの調律師の物語でしたが、
「蜜蜂と遠雷」はピアノコンクールの物語です。
世界5か所の大都市で行われるオーディション「国際ピアノコンクール」
モスクワ、パリ、ミラノ、ニューヨークそして日本の芳ヶ江(芳ヶ江は架空の都市であるが楽器の工場が集まる大都市という想定から浜松か?)
約100人のコンテスタントによる第1次から3次予選そして最終6人で競われる本選。
物語は主に4人の出場者を追って展開していきます。
その中でも、養蜂業の父を持ちフランスで生活する16歳の日本人の天才少年「風間塵」にスポットが当てられています。
彼は父の養蜂業を手伝うと共にピアノ界の世界の巨匠ユウジ・フォン=ホフマンに師事しています。
学校も行かず(父が教育者で専ら父から教わっている)ピアノも持たず、ピアノを教わりにホフマンの家に行ったり、ホフマンが塵を尋ねたりしながらの生活です。
また、コンクールで提出する履歴も白紙同然で、ただホフマンに5歳より師事と書かれているのみ。そして、ホフマンの推薦状が添えられていました。
審査員たちは、ホフマンは今まで弟子に推薦状を出したことは無く、異例中の異例だとして、その真偽を疑う者さえありました。
ホフマンの才能とはまるで異質な風間塵の才能に審査員の評価は真っ二つに分かれた。
はたして天才風間塵はホフマン先生の贈り物(ギフト)なのか災厄なのか?
審査員たちの揺れる評価に、コンクールの直前に亡くなったホフマンの風間塵への推薦状(※)がのしかかる。
(※)推薦状
皆さんに、カザマ・ジンをお贈りする。文字通り、彼は「ギフト」である。
恐らくは、天から我々への。だが、勘違いしてはいけない。
試されているのは彼ではなく、私であり、審査員の皆さんなのだ。
彼を「体験」すればお分かりになるだろうが、彼は決して甘い恩寵などではない。
彼は劇薬なのだ。中には彼を嫌悪し、憎悪し、拒絶する者もいるだろう。
しかし、それもまた彼の真実であり、彼を「体験」する者の中にある真実なのだ。
彼を本物の「ギフト」とするか、それとも「災厄」にしてしまうのかは、皆さん、いや、我々にかかっている。 ユウジ・フォン=ホフマン
ピアノを知らない私でも面白く読めました。
コンクールでコンテスタントが弾くショパンやシューマン、ブラームス、リスト、ドビュッシー等の曲がどんな曲なのか分からなかったので、そのイメージは再現することができませんでした。
ピアノが御専門のひまじんさんなら、この小説をもっと深く読むことが出来ると思いました。
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