ザリガニの鳴くところ
全米でベストセラーになったディーリア.オーウェンズの小説です。
訳者のあとがきから引用します。
物語は1969年、ノースカロライナ州の湿地でチェイス.アンドルーズの死体が発見されるところから始まる。草藪と海に囲まれた小さな村での出来事である。
大切に育てられ、高校ではアメフトのスター選手だった彼を殺そうとする人間などこの村にいるだろうか?ほどなく疑惑の目は、村人から「湿地に少女」と呼ばれ、人語も解さぬ野蛮な者と噂されてきたカイヤに向けられるようになる。
カイヤは幼いころに家族に置き去りにされ、それからはたった一人で未開の湿地に生きていた。偏見や好奇の目にさらされるせいで学校にも通えず、語りかける相手はカモメしかいない。ただ、燃料店を営む黒人夫婦のジャンピンとメイベル、それに、村の物静かな少年テイトだけはカイヤの境遇に胸を痛め、手を差し伸べようとする。
テイトに読み書きを教わったことでカイヤの世界はみるみる広がっていった。しかし、別れや拒絶は宿命のように彼女につきまとう。圧倒的な孤独の中、カイヤは、唯一近づいてきたチェイスに救いを見出すが、その先にはさらなる悲劇が待っていた。
チェイス.アンドリュースを殺したのは誰なのか?物語は操作が行われる1969年と、カイヤの成長を追う1952年以降の時代を行きつ戻りつしながら進み、やがて、思いがけない結末へと収束していく。
作品の舞台であるバークリー.コーヴは架空の村だが、カイヤが生きる湿地はディズマル湿地をモデルにしていると思われる。ヴァージニア州とノースカロライナ州をまたいで海沿いに広がるこの湿地はもともとは4千平方キロメートルほどの面積があったようである。だが、のちに初代大統領となるジョージ.ワシントンが1763年にこの地で宅地開発事業を始め、干拓や樹木の伐採が進められた。さらに1793年からは伐った丸太などを運ぶためディズマル湿地運河の建設が始まる。1970年代になるとようやく湿地の重要性が広く認識されるようになり、74年には約450平方キロメートルのエリアが国立野生動物保護区に指定された。またノースカロライナ州も58平方キロメートルほどの土地を自然保護区にし、現在はディズマル湿地州立公園として一般に開放している。しかし、それまでの開発や自然火災で湿地は大幅に縮小、面積はもとの半分以下にまで減ってしまったとされており、本作品にも湿地が無惨に破壊される場面が幾度か登場する。
ここで、作中で使われる貧乏白人という言葉について触れておきたい。
この呼称は、単純に「経済的に貧しい白人」という意味で用いられるわけではない。
南北戦争以前の南部の白人といえば、大勢の奴隷を使用して大農園を営む豊かな地主階級を想像しやすいが、当然ながら白人にも小規模地主や自営農民といった様々な階層があった。そして、その最下層にいるのが貧乏白人と呼ばれる人々だった。
彼らは名誉と美徳を備えた地主階級とは対照的なイメージで捉えられ、自堕落、暴力的、不衛生等、人格的にも劣る存在とみなされた。この呼称にはそうした、負のイメージがその後も根深く残りつづけたのである。
この作品のジャンルを特定するのは難しい。フーダニットのミステリであると同時に、ひとりの少女の成長譚とも、差別や環境問題を扱う社会派小説とも、南部の自然や風土を描いた文学とも捉えることができる。それほどに奥行きのある作品だということなのだ。
ただし、そこには全篇を貫くひとつの要素を読み取ることができる。
それは、「美と醜、優しさと残酷さを併せ持つ野生」という要素である。
このテーマは湿地と沼地を象徴的に対比させるプロローグに始まって、秘密が明かされる最後の章に至るまで繰り返し現れる。作中には筆者の専門である動物行動学に基づいた描写がたびたび出てくる。
子を捨ててしまう母キツネ、傷を負った仲間にいっせいに襲いかかる七面鳥、偽りの愛のメッセージを送るホタル、交尾相手をむさぼり食うカマキリ...。
ときにグロテスクとさえ思える野生の本能は、しかし、野生動物だけがもつものではない。著者はカイヤにこう語らせる。「その本能はいまだに私たちの遺伝子に組み込まれていて、状況次第では表に出てくるはずよ。私たちにもかっての人類と同じ顔があって、いつでもその顔になれる。はるかむかし、生き残るために必要だった行動をいまでもとれるのよ」そしてこう書く。「ここには善悪の判断など無用だということをカイヤは知っていた。そこに悪意はなく、あるのは拍動する命だけなのだ」
本作に描き出される、むせかえるほどに濃密な緑、広大無辺の闇、そこに息づく無数の命。その脈動と自分の鼓動を重ねるようにして生きるカイヤの姿はそれを読む私たちの心をも震わせる。
この作品を読み終えたかたは、ザリガニの鳴くところとはどこにあるのか、ふと、心の奥に耳を澄ませたくなる瞬間があったのではないだろうか。
※著者69歳にして初めての作品です。500ページに及ぶ長編小説ですが退屈することなくあっという間に読めます。私の好みからすると最後の3ページは要らなかったのでは?と思います。
関西のヒマジン 2023/03/05(Sun) 17:55
カルフォルニア州に大雪 2
これは救助の食料を貰うのに並んでいる人々の様子です。
風鈴 2023/03/05(Sun) 16:18
カルフォルニア州に大雪 1
カリフォルニア州は昨年まで水欠乏(飢饉)、特に州は野菜・果物を他州に輸出したので地下水を汲み上げてました。
その地下水も少なくなってたので大問題になってました。
ところが今年の冬に異常に雪が多くコロラド川の水面が元のレベルになったというニュースがありました。
州の大都会は平面地にありますが、山の方へ住む人が多くなってます。
この写真は数日前の雪で閉ざされた人達が、救助を求めるため雪の上に 「HELP US!!」 と書きました。
風鈴 2023/03/05(Sun) 16:09
結婚とは 3
結婚する前は、六つの如何に子供を育てるかの説があった。六人の子供が生まれたら、もう説は無くなった。
Jone Wilmot は17世紀イギリスの貴族の詩人。
風鈴 2023/03/05(Sun) 16:04
風鈴さんの結婚とは2
自分が間違った時には認め、正しい時には何も言わない
良いですねー。
関西のヒマジン 2023/03/04(Sat) 14:52
結婚とは 2a
何とか上手く行ったようですので続けましょう。
wedding cup は16世紀にドイツで始まられ、結婚式で使うカップ、
男が下のカップで飲み、女性は上の小さなカップで飲みます。ワインを飲むのでしょうか?
風鈴 2023/03/04(Sat) 12:24
結婚とは 2
結婚とは 2
結婚生活を wedding cup にあふれるような愛情で過ごすには、
自分が間違った時には認め、正しい時には何も言わない。
Ogden Nash は20世紀に活躍したアメリカの詩人です、
風鈴 2023/03/04(Sat) 12:20
結婚とは 2
今日「結婚とは 2」を入れようとしましたが画像が添付出来ません。明日まで待つ事にしましょう。
風鈴 2023/03/03(Fri) 16:09
言の輪74号「使嗾」発刊
お隣の言の輪の74号「使嗾」が発刊されました。
いつものように小説・エッセイ・Creative Writing・短歌・俳句・川柳
が掲載されています。
作品集を開いてご覧ください。
ひまじん 2023/03/02(Thu) 22:01