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「日本が抱える課題に対し、私たちは何ができるか」
近代政治思想史が専門の東京工大教授中島岳志氏へのインタビューです。
以下引用します。
この30年間を振り返ると、日本にとって1990年代が大きな転換期でした。
バブル経済崩壊や阪神・淡路大震災、地下鉄サリン事件があり、「日本は経済成長がずっと続き、かつ安全だ」という戦後の「神話」が壊れたためです。
続いて、2001年に誕生した小泉政権により、労働現場で安心感が失われました。
終身雇用は当たり前ではなくなり、非正規雇用が急増しました。
東日本大震災と福島第一原発事故で、社会はますます不安に包まれています。
先行きの見えない時代に人々が望む政治家に、私が、「断言型」と呼ぶタイプがいます。あやふやなことは言わずに「断言」する。
論争のある政策でも、反対者を罵倒して「決定」する。
国民は「断言」や「決定」が7「正確」だと考えて安心してしまう。
安倍政権は「決められる政治」を掲げます。
でも、政策の決定に至る根拠がなかったり、理屈が通らない説明だったりすることも多い。
だから、議会で強行採決を繰り返すのです。
国会は時間をかけて議論し、対策を考える場なのに、対話の責務を放棄しています。
対話によって合意を得るには、人間は不完全な存在だという認識が大切です。
自分は間違っているかもしれない。
まずは相手の言い分に耳を傾ける。
相手に理があれば自分の考え方を修正する。
徐々に合意点を探るのです。
私たちは、場当たり的で極端な変革を訴える言葉に熱狂するのではなく、常に微調整を続け、少しずつ改革する大切さに目を向ける必要があります。
まずは、様々な人とのつながりを生む時間と空間を大事にする。
町内会や習い事、仕事以外の飲み会といった機会に人と出会い、対話する。
異論を持つ人とも合意を重視する人たちは、いつ崩れるか分からない「神話」に寄りかからなくなります。
より良い未来は、歴史や伝統、異なる意見に気を配りながら、少しずつ改革を進めてこそ築ける。
拙速さは混乱をもたらします。
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